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「~てみる」の意味とそれの実現する条件

时间:2008-03-31 22:58:08  来源:本站原创  作者:echo

 

吉川 武時
は じ め に
問題・方法・資料
「~てみる」の意味
1. あることを知るためにする動作をあらわす「~てみる」
1.1 知覚活動をあらわす動詞
1.2 知覚器官を働かせるための条件づくりをする動詞
1.3 情報収拾機能をあらわす動詞
1.4 単純動作をあらわす動詞
2.ある動作をした結果の状態を知るためにする動作をあらわす「~てみる」
2.1 語いのレベルでの考察
2.2 形態のレベルでの考察
2.3 構文のレベルでの考察
2.4 文脈のレベルでの考察
3.ある情報をもたらし,または結果を生みだすことになる動作をあらわす「~てみる」
は じ め に
本稿は,1971年にオーストラリアのモナシュ大学(Monash University)で,「現代日本語動詞のアスペクトの研究」1)という論文を書いた時,あつめた資料により,「~てみる」の意味について考えをまとめたものである。「~てみる」という形式はアスペクトとは直接関係ないが,ついでにカードをとっておいたので,そのカードを利用し,内容を検討して,稿をなしたのである。その際にも前述の論文を書いた折にも,モナシュ大学の方々,特に高橋太郎先生には絶大なる御指導,御教示をいただいたので,紙上をかりてお礼を申し上げる。
そのようなわけで,1971年に一応 成った本稿であるが,このたび「日本語学校論集」第二号の発刊に際して,そのページをかりて公刊・発表するしだいである。
問題方法資料
「している,してある,してくる,していく」のような「~て…」という形式が一単位となって,ある文法的意味をあらわすことがある。その際「している」を「し」と「て」と「いる」というようにバラバラに分けず,「している」全体を一単位としてとらえるということに注目していただきたい。このようなとらえ方をすることによって,「アスペクト」などの概念が容易に生じ,その他の日本語動詞の諸形式についても考察がすすめられるようになった。
ここで,いわゆる伝統的といわれる国文法における,「~て…」という形式のとりあつかいを見てみよう。
伝統的国文法では,「ごはんを食べている。」の「食べている」を
食べ……
動詞「食べる」の連用形
て………
接続助詞
いる……
動詞「いる」の終止形
と分析し,特にこの場合の「いる」は本来の意味(「机の上にねこがいる。」の「いる」…≪存在≫)からずれた意味で使われているから補助動詞である,と説明する。
これに対して,松下大三郎博士2),佐久間鼎博士3),金田一春彦博士4),三上章博士などは,「食べている」を一単位として扱い,「食べる」に関するある一定の文法的意味(この場合は「継続」のアスペクト)をあらわしている,と考えている。分析するとしても,
食べて……
動詞「食べる」の「て」の形,または「テ」フォーム,あるいは gerund
いる………
補助動詞,あるいは auxiliary verb
のようにし,「て」という接続肋詞はみとめない。そして,「動詞の『て』の形に補助動詞のついたものは,ある一定の文法的意味をあらわす。」と説明する。
このような意味で補助動詞とされるものには「いる,ある,くる,いく,おく,しまう」(以上は主にアスペクトをあらわす),「やる,あげる;くれる,くださる;もらう,いただく」(以上はいわゆる「やりもらい」の補助動詞5))がある。
「~てみる」という形式も,このような意味で,一単位となって一定の文法的意味をあらわしているとみとめられる。松下(1924)では「経験態」をあらわすと説明され,佐久間(1957)では春日政治氏からの引用として「甞試」をあらわすと説明されている。
日本語を外国人に教えるための教科書6)を見ると,このような「補助動詞」について学習するための一課ないし数課が設けられている。
例えは,A.Alfonso の「Japanese Language Patterns」では, 17課において Verb Clusters として学習する。Niwa & Matsuda の「Basic Japanese for College Students」では,5課において,gerund plus Auxiliary Verb(aru,iru,oku,miru,shimau)として学習する。国際基督教大学の「Modern Japanese for University Students(Part I)」では,31課において「いる,ある」を, 35課において「おく,いく,くる,しまう,みる」を学習する。(株)ランゲージ・サービスの「Intensive Course in Japanese(Elementary Course)」では, 36課と 38課においてこの問題を扱っている。 S.Martinの「Essential Japanese」では,7課において gerund+miru が,10課において shimau,oku が扱われている。
S.Martin の本の7課では,gerund+miru は次の二つを意味する場合がある,と説明されている。
(1) does something to see(how it will turn out)
(2) does something and finds out,or tries to do something(to see how it will turn out)
この研究で特に重視した方法は次のとおりである。
  1. 「~てみる」の形式のもつ文法的な意味を,基本的な意味から派生的な意味にいたるまでこまかく検討した。そしてそれらの意味の間の関係を明らかにしようとした。
  2. この形式が実現する意味は,動詞の語い的意味と深い関連をもっているので,そこにあらわれた動詞の語い的分類をできるだけくわしくした。
  3. 意味が決まる要因として,単語のレベルでは動詞の性格が大きく効いているが,その他に連語のレベル,文のレベル,コンテクストのレベルのそれぞれで,意味の決定にあずかる要因が働く。これらのことを常に考慮に入れて意味の分析をした。
  4. 例文は,実際に使われているものの中からとることとして,あとにあげる作品の中から選び出した。
資料としては,映画のシナリオと,小学生用の国語の教科書を使った。
シナリオ 1.橋本 忍「白い巨塔」1966
      2.橋本 忍「白と黒」1963
      3.須崎勝弥「キスカ」1965
      4.新藤兼人「傷だらけの山河」1964(「傷」と略す)
      5.黒沢 明「天国と地嶽」1963(「天」と略す)
      6.佐治 乾・河辺和夫「非行少年」1964(「非」と略す)
      7.井手俊郎「女の中にいる他人」1966(「女」と略す)
      8・安部公房「砂の女」1964
      すべてダゲィット社発行の「年鑑代表シナリオ集」による。
 教科書  「小学新国語一年上」1970  「小学新国語一年下」1968
      「小学新国語二年上」1970  「小学新国語二年下」1968
      「小学新国語三年上」1967  「小学新国語三年下」1968
      「小学新国語四年上」1968  「小学新国語四年下」1965
      「小学新国語五年上」1968  「小学新国語五年下」1965
      「小学新国語六年上」1968  「小学新国語六年下」1965
      すべて石森延男著/編,光村図書出版株式会社のものである。
本文中の例文では, 次のような方法で出典を示した。
  1. シナリオでは,タイトルと,場面ごとにつけられた番号によって示した。
  2. 教科書では,学年,上下の別・ページの順に示した。このページは問題とする形式ののっているページではなく,その例文のはじまるページを示す。だから,例えば,15ページに「してみる」という箇所があっても,その例文のはじまりが 14ページにあるなら 14とした。
以上のようなわけで,「~てみる」の文法的意味を深く研究することは,「補助動詞」とは何かについて考察するとともに,外国人に効果的に日本語を教えなければならない場合の資料を提供することにもなるので,これを研究してみたしだいである。

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