您现在的位置:首页 > 双语阅读 > 小说与诗集 > 伯爵与妖精 > 正文

魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一 第一章1.3

时间:2011-09-02 14:22:40  来源:可可日语  作者:ookami

「ああそういえば、アシェンバート伯爵、あなたはあの、高名な青騎士卿(きょう)の血筋なんだってね」
 テーブルの端に座っていた男が言った。ついさっき、チョーサーを熱く語っていた文学者だ。
「高名とは言い過ぎです。ほとんどの英国人にとって、青騎士卿はハムレット同様架空の人物ですよ。彼ほど有名でもありません」
「まあ、だったら青騎士卿って、実在しましたの?F ブラウンの小説なら知っていますけど、とても不思議な物語だったわ」
 青騎士卿の物語は、リディアも知っていた。エドガーがその血筋だという、思いがけない話に興味を惹(ひ)かれ、耳を傾けた。
 問いかけた貴婦人に、学者が解説を始める。
「ええマダム。小説のモデルとなったのは、エドワード一世に忠誠を誓った騎士。彼は王がまだ皇太子だった頃から、ともに十字軍を率いた人物です。妖精国から来たと言い、また数々な異国の冒険譚(ぼうけんたん)を語り、人々を魅了したとか……。ブラウンの創作は、青騎士卿の家来たる妖精たちの働きがたのもしく、不可思議な幻想小説に仕上がっていますね。でも、妖精の家来はともかく、エドワード一世の側近に、青騎士卿と呼ばれた人物は存在したのですよ」
 エドガーは黙ったまま、やわらかく頷くのみで、学者に好きなように語らせていた。
「現に青騎士卿は、エドワード一世によって英国伯爵に叙(じょ)せられています。彼が妖精国の領主であり、その忠誠を永遠に受けることによって、イングランド王が妖精の棲(す)む幻の領土にも君臨するというのは、英国流のユーモアではありませんか」
「違うわ。青騎士卿は本当に、妖精族の領主だったのよ」
 リディアは思わず口をはさんでいた。
 皆の視線が注がれる。ああまた、バカにされるんだわ。そう思いながらも、学者の話に反発を覚えれば、黙っていられなかった。
「ええと……だって、ミスター、青騎士卿の実在は信じるのに、妖精国を冗談だと決めつけるのはどうしてですか? 同じように言い伝えられているのに、片方は真実で片方は作り話だなんて、おかしいわ」
「お嬢さん、妖精話は荒唐無稽(こうとうむけい)すぎるが、青騎士卿に爵位を与えたという文書が存在するからには、彼の実在は疑いようもないのだよ」
「そうですね。でもその文書には青騎士卿について、イブラゼル伯爵、と明記されていますよ。イブラゼルとはゲール語で、海の彼方にある幻の妖精郷。となればこれも真実。当時の人間が、妖精国の存在を冗談と考えたでしょうか」
 エドガーはにっこりと笑う。
 助けられた、のだろうか。
 リディアに向けられていた周囲の不審(ふしん)げな視線は、あっさりとほどけていた。
「たしかに、昔の人は妖精も悪魔も、存在を疑わなかったそうですもの、エドワード一世もそうだったのでしょうね。でしたら、伯爵ご本人にうかがいたいわ。妖精国に領地をお持ちですの?」
「もちろん、先代から譲り受けました」
 さらりと言ってのければ、それこそ英国流のユーモアと受け取れる。
「あら、招待していただきたいわ」
「連れて帰ることができるのは花嫁だけと、先祖代々決まっているのですよ」
「まあまあ、そんなふうに口説かれたら、リディアさんが妖精の国を信じないわけにはいかないのもわかりますわね」
「てことは、少しくらいは脈がある?」
 エドガーはまた、リディアに慈(いつく)しむような視線を送った。
 冗談と割り切った会話。けれども誰も、妖精を否定しない、奇妙な空間。
 ちょっとしたごっこ遊びのよう。
 リディアはバカにされたりせず、エドガーの話術ひとつで、あたたかい目で見守られる。
 自分では好きになれない、くすんだ赤茶の髪を、くせがなくてうらやましいとほめられ、魔女や妖女を連想させるらしい緑の瞳も、ペリドットにたとえられる。
 上質のお酒と、シャンデリアのきらめきと、香水の香りに酔う。
 妖精族を治めるという人間の領主、青騎士伯爵の末裔(まつえい)は、もしかしたらリディアを理解してくれるのだろうかなどと、ぼんやりと考えていた。

上一页 [1] [2] [3] [4] 下一页

相关阅读

无觅相关文章插件,快速提升流量