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魔幻小说:《伯爵与妖精》卷一 第二章2.2

时间:2011-09-05 13:38:25  来源:可可日语  作者:ookami

 そのうえそれは、少々ひん曲がった癖(くせ)のある文字の集まりではあったが、妖精うんぬんに惑わされずに見れば、アルファベットだとすぐにわかったのだ。
「……おもいきり英文じゃない。あなた、あたしを試してる?」
「きみの実力を、僕は知らない。世の中には、たいていの人には見えないのをいいことに、幽霊(ゆうれい)や妖精や未来のできごとについて、自分だけは知っていると言いたがる人種がいる。でもきみは、何でも不思議に結びつけないし、僕には理解できないからといって、いいかげんなことを言うつもりはないようだ。それがわかっただけでも、お互いにとってプラスだろう?」
 あっけらかんと言われ、リディアはますます眉根を寄せた。けれども、なめられるなんてしゃくだ。
「青騎士卿の子孫なのに妖精が見えない伯爵さま、ならあなたは、これを刻んだのは本当に妖精だと信じてるのかしら?」
「これは人が刻んだものだ。少なくとも、この程度の細かい細工なら、人間の手でやれないことじゃない。妖精が存在する証拠にもならない」
「つまりあなたは、基本的には妖精を信じない人なのね。それなのに、妖精が守るという宝剣の存在を信じて、いかさまかどうかもわからないフェアリードクターに探させるの?」
「青騎士卿の剣そのものには、歴史的ないわれがあるだけで謎めいたところはないよ。問題はその隠し場所だ。それを示す言葉として、妖精の名が使われている。リディア、フェアリードクターの武器は、妖精に関する知識と交渉能力だと言ったね。僕はその、知識の方がほしい。不思議な力はいらない。ここに刻まれた言葉の意味がわかればいい。そのために妖精を信じない僕が、フェアリードクターの協力を求めることは、きみのプライドを傷つけるのかい?」
 挑戦的な目を向けられれば、リディアは、こいつに認めさせてやりたいという気分になる。
 フェアリードクターが、昔から必要とされてきた理由を。
 妖精と人とのつながりは、知識だけではほどけないほど深いのだ。
「エドガー、あたしに知識以上のものを求めないと、宝剣は手に入らないわよ」
「たのもしいね。ならまずはこれを読んでくれ」
 一息ついて、リディアは紙片を手に取った。
「緑のジャックはスパンキーのゆりかごから。月夜にピクシーとダンス。シルキーの十字架を越え。プーカは迷い道。……何よこれ」
「それが知りたい」
 そんな調子で、妖精の名が続く。とにかくリディアは、最後まで目を通す。
「……メロウの星は星とひきかえに。さもなくば、メロウは悲しみの歌を唄う。……これで終わり?」
「メロウの星というのが、宝剣を飾るスターサファイアのことだよ」
「じゃあともかく、この最後が肝心(かんじん)の、宝剣に関することなのね。星とひきかえにってどういうことかしら」
「それもわからないが、ほかの部分もわからない」
「前半は、やっぱり隠し場所のヒントか何かだと思うけど。伯爵家の土地はどこにあるの? 行ってみないことには、どうとも言えないわ」
「所有する土地や建物が、英国中に点在していてね」
 エドガーは地図を広げた。赤いバツじるしがあちこちにあった。
「どこから調べればいいの?」
「それも知りたい」
 リディアは閉口(へいこう)する。しらみつぶしにやっていたら、とてつもなく時間がかかる。なのにこいつは、「知りたい」のひとことで押しつける。
 それはまあ、向こうにとっては、リディアに依頼した仕事だからだが。
 仕事か、とリディアはつぶやく。
 結局、引き受けるしかなさそうだ。
 けれど前向きに考えてみれば、フェアリードクターへのめずらしいくらいまともな依頼だった。
 一人前になりたいなら、こんなところでつまずいているわけにはいかないと、ヤケクソになりつつリディアは闘志をかき立てる。
 どの土地が重要なのかも、さっきの言葉の中にヒントがあるのではないか。
 メモと地図を見比べる。とある特徴に気づく。

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「あら、アイルランド系の妖精が多いのね」
「へえ、そうなのか? でも、アイルランドには土地も屋敷もないな」
「それに、メロウってアイルランドで言う人魚のことだけど、これが宝剣を指すってことは、海に近い場所かも」
 アイルランドに近い西岸をたどる。アイリッシュ海を望む沿岸に、一カ所しるしがついていた。
「あ、ここは? マナーン島。島なら、人魚伝説のひとつやふたつありそうだわ」
「なら、ここからせめよう」
 ロンドンへ行くのに、ずいぶん遠回りな旅になりそうだった。
「言っておくけど、ただ働きはいやよ。前払いにしてほしいわ」
「いいよ。いくら?」
 そういえば、これまでほとんどまともな依頼を受けたことがなく、料金も具体的に考えたことがなかったと、今さらながら気がついた。
 けれど、そんなことがばれたら足元を見られると、リディアは必死にポーカーフェイスを装う。
 安くしすぎてもなめられそうだ。
 思い切って、五本指を開いてエドガーの前に突き出した。

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