双语阅读:【青春小说连载】春の夢(102)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
八(9)
熊井は沢村千代乃の言葉をドイツ語に変えて、ラング夫妻に伝えた。ラング氏はしばらく考え込んでいた。沢村千代乃の言った意味がよく判らないようであった。
「茶は、生死を覗き見る儀式だと思ってるの。茶もまた、あなた方が信じてらっしゃる神と同じかもしらない。私は、茶も宗教だと思っています。茶室にいるときは、亭主も客も死。茶室から出たら生。だから、ここから出たら、いやでも生きなきゃいけません」
ラング夫妻は熊井の流暢なドイツ語に耳を傾けていた。西洋人の老夫婦に、沢村千代乃の言う意味がどれだけ理解できたかは判らなかった。けれどもラング氏は熊井の言葉にときおり頷いてみせた。
「私たちは家の方に戻りましょう。熊井さんはおふたりから、もっと詳しい事情を話してもって下さいな。人間て、ふっと死にたくなるのと同じように、ふっと生きたくなるものでしょうから」
哲之と陽子は、危なっかしい足取りの沢村千代乃を両脇から支えて茶室を出た。野鳥は舞い戻って、庭の芝生のあちこちで囀っていた。雪見燈籠のまわりに、真紅のもみじが散り零れ、それを木洩れ陽が照らしていた。庭の一番高く盛りあがっている地点に来たとき、日向ぼっこでもしましょうかと呟いて、沢村千代乃は芝生の上に坐り、痛めている方の足を撫でた。そして哲之と陽子と三人で、茶室を眺めながら言った。
「私はあの人と、もう五十年ほど前に、あるお茶会で逢ったんですよ。」
「あの人って、御婆さまの旦那さまですか?」
陽子が訊くと、沢村千代乃はかすかな笑い声を混じえて、
「旦那さまじゃなくて、ダンナよ、カタカナの」
と言った。
「私が三十二のときですよ。あの人は金にあかせて、すばらしい茶の道具を買ってくれました。みんな名だたる茶道具です。壺、茶碗、茶杓、釜。さっきのアラレ釜もそのうちのひとつです。でも茶のことは何も知らない人でした。千利休がどうの、その時代の有名な茶人がどうのと、知識だけはたいしたものでしたが、まああれくらい下手な人もいなかったでしょうねェ。茶を少しかじった人は、誰もが、千利休はなぜ己の命を絶ったのかって、まるでそのことに触れないと茶をたしなんでいるとは言えないみたいに話題にしました。あの人もそうでしたし、私もそうでした。いろんな説がありました。秀吉に対するあてつけだとか、挑戦だとカって……。でもつい最近、最近と言っても二年ほど前、私はとうとうそれが判ったのよ」
哲之の脳裏に、さっきの沢村千代乃の不思議な微笑が甦った。彼は、茶のことは何も判らなかったが、千利休のことも、秀吉の時代の茶人で、あるとき自裁して果てたと言う事実しか知ってはいなかったが、沢村千代乃にいったい利休の死の何が判ったのか聞きたい衝動(しょうどう)に駆けられた。沢村千代乃はいっこうに次の言葉を発しないまま、巽の池を眩しそうに目を細めて見ていた。
「利休はなぜ死んだんですか?」
哲之が口を開きかけると同時に、陽子が質問した。それでやっと沢村千代乃は喋り始めた。
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