双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(180)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
やはり定年後の静かな生活を夫婦水入らずで過ごそうと福岡に戻って来たおじちゃんたちに気兼ねしないはずがない。おじさん夫婦はおっとりした優しい人だったけれど、それとオカンの感情は別問題である。
あまり沈んだ気持ちをボクに伝えることなどない人だったけれど、その時に電話から伝わった声は、何か心細い精神状態が聞いてとれるようだった。
「ブーブおばちゃんのところは?」
「そんな迷惑ばっかり掛けられんわね……」
「どうするんね?」
「どうしようかねぇ……」
ボクはこの時、初めてオカンの溜息を聞いたような気がした。
六十過ぎてガンになり、今でも治療を続けている。友人たちは家族で当然のように暮らし、孫のいる人も多い。もう、この年で外に働きに出ている人は少ないだろう。
オカンはそういう風景を働きながらどんな気持ちで眺めていたのだろうか?
そんな身体と気持ちの中で、自分のこの先の人生が何色に映っていただろうか?
そんな暮らしの中で、人が最低限落ち着ける自分の家、自分の居場所すら、オカンは持っていない。
オカンが子供の頃のこの町は炭坑が栄(さか)え、人との活気と希望が溢れていた。オカンはその中で九人兄弟大家族として賑やかに育ち、将来の自分の夢見ていたことだろう。
その頃から五十年の月日が流れて、オカンはまた、その時と同じ場所にいる。炭坑は閉山になり、もくもくと煙を立ち昇らせていた立て坑の煙突も、発破(はっぱ)の音もない。
人々はこの町を離れ、もうあの頃の輝きはこの町のどこにもない。
しかし、その移り変りは今のオカンにはどうでもいいことかもしれない。なによりもオカンの想像できなかったこと。瞳を輝かせていた子供の頃に想像すらしなかったこと。
五十年後、年老いた自分がこの町でひとり、病魔に襲われながらも腰を曲げて働き、所在ない気持ちで暮らしていること。
自分はそうしていること。
溜息をついていること。
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