双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(187)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
その日の夜は、外食に行こうと言ったのに下のスーパーを見てみたいと買い出しに出掛け、結局、酢豚を作り始めた。
小さな蛍光がチラチラ光る狭い炊事場で野菜を刻(きざ)みながら「東京は野菜が高いねぇ、ビックリした……と呟いていた。
ぎこちなくビールで乾杯をする。オカンの料理を食べるのは久しぶりだった。
「オカンは、ここにずっとおって、いいんかね……?」
最初にきちんと話しておきたかったのだろう。神妙な口調で言葉を切り出してきた。
「いいも悪いも、もう来てしもうとるやんね。ここで東京の病院に通うて、病気も治したらいいし、心配せんでよか」
「もし、オカンが死んだらね……」
「辛気くさいこと言いなさんな。死にゃあせんのやから。ずっとおったらいいんやけん」
「そしたら……」
オカンは座り直して他人行儀に姿勢を整えると、頭を下げながら言った。
「よろしくお願いしますね……」
九大病院から紹介状を用意してもらったオカンは表参道にある甲状腺専門の病院に通院することになった。
甲状腺では有名なこの病院には、連日、日本中から患者は駆けつけている。
ボクの方は、その頃から仕事も増え始め、どうしたことか毎日忙しく働き回るようになった。収入が安定するとまではいかないにしても、親子ふたり食うに困ることも、得意な家賃滞納をすることもなくなった。自動車の教習(きょうしゅう)所にも通い出し、まるで中学時代にタイムスリップしたよな朝が始まった。
「早よ起きんかね!学校行かな遅刻するばい!!」
オカンに起こされ、目を醒めますとすぐ隣のキッチンから、味噌汁の匂いとぬか漬けの香りがしている。オカンの少ない荷物の中にはオカンの唯一の宝物であるぬか漬けの壷が当然のように入っていた。到着したその瞬間から、毎日かき混ぜられ、その日その日の野菜が漬けられていた。
自堕落な生活の染み付いていたボクは、どんなに重要な用事があっても寝醒めが悪く、遅刻、すっぽかしを繰り返していたのだけど、このオカンの作る朝食と、ボクが起きる時間に合わせて漬けられたぬか漬けの威力には不思議と目が醒めたものだった。
風呂が沸かしてある。洗濯物が畳んである。部屋が掃除してある。キッチンからはいつも食べ物の匂いがたちこめている。
湯気と明かりのある生活。今までと反対の暮らし。あの頃、あれだけ仕事に集中できたのは、あの生活があったからなのだと思う。
ありきたりなことが真面目に行われているからこそ、人間のエネルギーは作り出されるのだろう。
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