双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(195)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
「あの折り畳みのベッドは背中が痛かろうが、あんなので寝よったら疲れも取れんやろ。笹塚の商店街の家具屋があろうが。あそこでね、注文してきたけん。色々あったけどね、毎日使うもんやけん奮発してええのを買うたけん、それで寝なさい」
「なんぼしたん……?」
「十四万くらいしたよ」
「そんな金、持っとったん?」
「あぁ、これで全部のうなったぁ」
「いつも生活費は月末になると家賃分をオカンに渡し、ビルの管理事務所へ支払うようにしていたし、食費や細々(ほそぼそ)した出費は、金がなくなるたびにオカンが「もう生活費がなくなったよ」と申告するので、その都度、三万とか、二万とかを小刻みに渡していた。
そして、その時、ついでとばかりにオカンに前々から気になっていたことを聞いてみた。
「オカンは貯金とか、ないやろ?」
「あぁ、もう、のうなったぁ……」
「あの、年金とかはどうしとるん?」
「年金もね、ずっと払いよったんやけど、もう途中できつくなってから払いきらんごとなったんよ……。もったいないけど、そのままになってしまうた……」
それはオカンではなく年金制度が悪い。こんなオカンみたいに六十までパートでコツコツ働いて、暮らすのが精一杯の低家賃しか貰えない人が月月の年金なんか納められるか。
払わないからわるんだという人もいるだろうが、月月一万円がその日を生きるための大金である人に、あるかどうかわからない未来のための納付なんかは物理的にできるわけがない。
ない袖は振れない、ノースリーブはどれだけ伸ばしても長袖にはならない。人生色々、仕事も色々だということを知っているのなら、孤独な老人や病人、低家賃労働者に対する違うかたちのなにかを作れ。増やせ。年金かすめ取って造ったホールでロックのコンサートなんか聴いても興醒めするだけなんだから、そんなものは潰して配れ。
オカンが金を持っているとは思っていなかったが、心のどこかで大人なんだし、少し貯(たくわ)えがあるのではないかなと期待していたことは否(いな)めない。その金をくれと言うつもりじゃないが、あいにくこちらにも貯金を呼べるようなものはない。オカンの病院のことも考えて、あったらいいなぁくらいのことだが、やっぱりなかった。
「そっか、そりゃそうか……」
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