双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(198)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
白いウサギを「パン」。黒いウサギを「ぶどう」という名前にして、七階のベランダで放し飼いにした。
結局、エサの世話も小屋の掃除も、オカンがすべてすることになるのだが、オカンは毎日、ウサギ小屋を掃除し、頭を耳を撫で回し、どうやったらそんなに小動物と会話ができるのだろうかと思うくらい、ウサギと話をしていた。
洗濯物の揺れるベランダで、小さな椅子に腰掛けてウサギと話しているオカン。
のんびりとした、穏やかな時間が流れている。いつの間にか、家の中のドアノブ、ティッシュの箱にはカバーがかけられている。冷蔵庫にはスーパーの特売のチラシがマグネットで留められている。
平和であることしか特徴のない風景。もう、オカンがガンであることすら忘れかけていた。
しかし、ガン細胞の方は、自分がオカンに巣くっていることを忘れてくれてはいないようだった。
"時々、息苦しくなる"と言い始めてから、度々、夜中にオカンは目を醒ますようになった。呼吸ができなくなって、苦しくて目が醒める。オカンの部屋からヒキガエルのような声が響き、急いでふすまを開けると、ベッドの上でうつ伏せにうずくまったオカンが呼吸困難に陥って、もがいている。
「オカン、どうしたんか?息ができんのか?」
声を掛けても返事ができずに、喉を鳴らし続ける。首元を冷やし、背中をさすってると、じっとりとした汗が寝着を生温かく濡らしていた。
その発作は断続的に起きるようになり、その間隔は次第に短くなっていった。家で寝ているときも、町田のミッチャンの家に泊まりに行っている時も、その発作(ほっさ)は起こった。
「死ぬかと思うたよ……」
そのたびに、同じ言葉を口にする。病院では前の手術の後遺症(こういしょう)が出ているのではないかとも言われていたが、精密検査を受けた結果、やはり転移していたガン細胞は、声帯付近と食道の一部で大きくなっていて、その膨らみが呼吸喉を塞いでいるとのことだった。
九大病院の甲状腺の摘出手術を受けて二年後、度重なる苦しいヨード治療を受けたにも拘わらず、オカンのガンには効果がなかったようだ。
病院の説明を聞きにオカンと表参道へ向かった。手術しか他に手段はないとのことだった。一度フランケンになった首の傷痕をもう一度開いて、声帯をすべて摘出する。九〇%以上の確率で声を失うことを覚悟して欲しいと言われた。それほどガンは広がっているのだ。
このままでは命にかかわる病状に発展しかねない。家に帰って、オカンと話し合い、ボクは一も二もなく手術を勧めた。それしか方法はないのだ。勧めるもなにもない。
「手術しよ。声は出せんようになるかもしれんけど、そら、もう仕方なかろう。このままやったら死んでしまうやろ。ここんところ、しょっちゅう呼吸困難にもなるんやし」
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