双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(205)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
「帰ってやりよ。最後に顔見せてやり」
「……。いや、帰らん……」
「おいちゃんは立派に働いて、子供も育ってて頑張ってきたんやけん。そのおいちゃんが自分で決めたことなんやけん。若いもんのする同じこととは違うんよ。明日の朝一番の新幹線で行ってやり。あれだけ立派に生きてきた大人の人が年取って亡くなる時は、もうそれがどんな死に方でも、その時が寿命よ。帰ってやったら、おいちゃんも喜ぶよ。お疲れさまって言うてやったらええ」
オカンは一晩中、泣いた。次の朝、渡した旅費と香典を持って、朝一番の新幹線で筑豊に帰って行った。
オカンの手術の日。
朝九時に病院へ行くと、もうオカンはストレッチャーの上に乗せられていた。二週間の事前入院の間、同室のおばさんたちとしっかりコミュニケーションをとっていたようで、ストレッチャーの周りには寝着を着たおばさんはオカンを励ましながら泣いている。病人同士の友情は利害がなくシンプルだが、することの縁起は悪い。
両耳に数え切れないほどのピアスをした茶髪の看護婦が恐ろしく長い針の予備麻酔をオカンの肩に突き刺した。
あんたが普段、ジュリアナ東京で扇子を振り回しながらパンツ丸見せにしているとしても、その注射だけはしっかり打ってくれ、と心の中で強く祈った。
一度、九州に戻って前日にまたやって来たオトンと、ストレッチャーの後ろをついて行く。病室の外まで同室のおばさんたちが泣きながら見送り、手を振った。
「がんばってぇー!!」。病人同士の連帯感は熱い。
麻酔の効き始めたオカンの口元からこぼれるよだれをガーゼで拭いた。
手術室の大きな自動ドアが開き、ストレッチャーごとオカンはドラマのワンシーンのように吸い込まれて行った。
空虚な目でボクを見ていたオカンに、何かかけてあげる言葉も見つからず、ボクはただ閉じた手術室の自動ドアの向こうを見つめながらガーゼを強く握りしめるしかなかった。
オトンは後方から、心細く立ちすくんでいるボクに、おいと声を掛けた。
「煙草喫いたいのぉ」
本当に好きだ、この人、煙草が。
手術が終わったのは、それから十五時間後の夜更けだった。
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