双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(244)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
敦子姉ちゃん夫婦が病室から出て行った後、そこにいたヨシエにオカンはこう洩らしたのだという。
「敦ちゃんと萬屋さん、あの夫婦にね、死ぬまでに一回、ちゃんと謝(あやま)らんといけんことがあるんよ。そのことが、ずっと気になってからねぇ……」
その当時。敦子姉ちゃんと萬屋さんの結婚に、小倉のばあちゃんと兄であるオトンは猛反対したらしい。反対した理由はわからないが、とにかく、中川家の中では結婚は許さん、の一点張りだったそうだ。
ところが、その結婚に家族は反対しているということを、その本人たちにばあちゃん、オトンが告げるのではなく、オカンにそれを伝えに行けと強要された。
「あたしは好き同士が一緒になるのが一番と思うとったけん、なんでそんなこと言うんやろうかと思うんよ。私は賛成しとったんやけど……」
なぜ、そんなことを肉親ではなくと嫁いで来たばかりの義姉に転言させるのか理解に苦しむが、オカンは嫌々(いやいや)ふたりを呼び出し、反対の旨を伝えることになった。
「あの時、ふたりはたいがい嫌な思いをしたやろうねぇ。かわいそうにねぇ。あたしは賛成しとるんやけど、そうも言えんやった……。あの時、あんなこと言うてしもうて、一回ちゃんと謝りたいと思いよったんよ……」
そんな理不尽な伝令(でんれい)に四の五もなく行かされる、その家の中でのオカンの立場とはそのような扱いだったのだろうか。
しかし、結局はどういう経緯で相成ったのかは知らないが、ふたりは晴れて結婚することになった。そして結婚した直後に萬屋さんはアメリカに転勤することになり、オカンもそれから顔を合わせることがほとんどなくなったのだ。博子もアメリカで生まれた。
そして、オカンにはその時の釈然としない後悔だけが三十年以上燻り続けていたのだった。
慌しい毎日の中。気が付けばいつの間にか春はやって来た。アスファルトとコンクリートだらけの東京でも、どこからか芽吹いてくる新しい植物の匂いが生暖かい風に乗ってやって来る。
いつもならこの季節は、笹塚の消防学校前から幡ヶ谷方面に延びる小さな遊歩道の桜並木をオカンは散歩している頃だろう。
その年、二〇〇一年の桜開花宣言は三月二十四日。病院の入口にある桜の木にも二分、三分と花が膨らみ始めている。
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