双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(253)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
四月十三日金曜日
オトンが朝来た時にはオカンの痛みは鎮まってく、ぐっすりと眠っている時だった。昨晩のことを知らないオトンはオカンの寝顔を覗き見て「よぉ寝とるわい」と言った。
「しばらく、お母さんもこの状態が続きそうやのぅ」
なんの根拠(こんきょ)を以てしてかは知らないが、オトンはそう言うと、明日、一度小倉に戻って来ると言い出した。
「まだ、大丈夫やろう。一日帰って、用事を済ませてから、すぐ戻るたい」
言われてみれば、もう二週間も東京にいる。仕事があるのなら、色々と面倒なことになっているだろう。
ボクもここ数日、ほとんど寝ていない。疲労で精神力が切れそうになる寸前だった。オカンの手足を拭いて仕事に出る。
そしてまた、夜。病院に向かいながら車中の中でプロ野球中継(ちゅうけい)を聴いていた。普段なら毎試合の結果を気にしているところだが、この開幕から夜、ほとんど病院にいるもので、巨人がどうなっているのか、まるで知らない。
小さい頃、ボクはオカンに買ってもらった巨人のスタジアムジャンパーが好きで、よくそれを着て写真に写っている。
「あんたは長嶋が好きやったねぇ」
三十を過ぎてもまだ長嶋が好きなボクは巨人と同じユニフォームの草野球チームを作り、試合に出掛けては負けている。
メンバーを連れて家に帰って来ると風呂が沸かしてあって、オカンは決まってこう言った。
「また、負けたんやろ?」
そして、大きな木桶いっぱいに握ってあるおにぎりを出して、みんなに食べさせていた。
ラジオ中継の試合は延長十回裏。相手投手、横浜の森中から四番松井が看板直撃になるさよならホームランを打って試合を決めた。
サヨナラー!サヨナラだー!!松井のサヨナラホームラン!!
病院の駐車場に車を止めて、それを聴いていたボクにサヨナラの声が何度も耳に響きいた。
「オカン、松井はサヨナラホームラン打ったんよ」
氷ををくちびるに当てながらオカンに報告した。今日は、昨日と比べるとだいぶ落ち着いている。とても優しい表情だった。
おしぼりで手足を拭いて、手のひらをマッサージしていると、オカンがなにか言いたそうに、口をパクパク働かしている。もう、声がほとんど出ていない。
「……………………」
「なに?どうしたん?」
「……………………」
オカンの口元を注意深く見て言葉を探った。
「ありがとうって、言いよるん?」
オカンは小さくうなずいた。
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