双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(274)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
東京に暮らし始めても、オカンはずっと物のない時代に生まれた田舎のばあさんのままで、客であるとかいう以前に、社長も学生もみんなお腹がすいていると思い込んでて、食べられることがなによりも一番いいことと信じていた。
「食べんしゃい」
そう言って自分は冷たい御飯を食べていた。
柔和な顔立ちの住職はまだ四十代くらいだろうか、若々しい佇まいがありながらもお経を唱(とな)えるその音質は豊かな落ち着きがあった。
木洩れ陽の差す部屋の隅々に、お経が響きわたる。静静とした空気が、誰にとっても不慣れなこの家の中に染み入る。
「これからお母さまは荼毘(だび)に付されますので棺柩に生前お好きだったものを入れて差し上げて下さい」
葬儀社の中年男性が言う。
弔問客のひとりひとりが入れてくれた白百合の花弁で、オカンの身体は白い花びらに包まれた。みんなで写った写真、ウサギのぬいぐるみ、花札、手紙を書いてきた者はそれぞれに花びらの奥へと納めた。ボクもオカンに手紙を書いて入れた。
ボクは今まで、オカンにちゃんと「ありがとう」と言ったことがあるのだろうか。
小さなこと、大きなこと、毎日のことやこれまでのこと。そのひとつずつに言うべき感謝の言葉も、それはいつの間にか当たり前のことになってしまって、最後まで言葉で伝えることができなかった気がする。
これまで苦労させたことも、迷惑をかけたことも、心配させたことも、それはいつかお返しができるものだと思って、ほったらかしにしていた。でも結局、それができないばかりか、ひとこと「ありがとう」と言えなかった。
希望を込めて想う"いつか"はいつまでも訪れることがないのかもしれないけれど、恐れている"いつか"は突然やってくる。
"オカン、ありがとう"
手紙でしか言えなかった。生きとる時に言うてやったら、どんなにか喜んだやろうのにから。
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