双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(278)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
オカンの遺影を抱えていたオトンがゆっくりと立ち上がった。みんな座ったまま、オトンを見ている。オトンは立ち上がっても、しばらくなにも言わなかった。じっと目を閉じてうつむいたまま、どこからか言葉を探しているようだった。
「……。栄子と……私は…………」
そこまで言うと、オトンはなにも言わなくなった。泣いていた。今まで一度も涙を見せなかったオトンが、言葉に詰まって泣いていた。
ボクは生まれて初めてオトンが泣いているところを見た。
願はくは花のもとにて春死なむ
その如月の望月のころ
病院から引き揚げたオカンの荷物。その中にあった便箋の最初の一枚にオカンが書き残していた西行法師の和歌。
いつ頃、これを書いていたのだろうか。自分が死ぬこと。それはおそらく、入院する前から感じていたことだと思う。
歌われている季節とさほど違わずして、オカンは花のもと、春に死んでいった。
なにを望む人でもなかったけれど、往生の季節は西行のように、望みがあったのかもしれない。
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