双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(289)
东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。
この夫婦にしかわからない、二人だけの素晴らしい思い出、取り戻せない時間。ボクとオカンの中に残る、かけがえのない記憶、未完成のままの贈り物。
それからも生きてゆくボクたちは、それぞれに、その温かい思い出を握りしめ、埋まることのない思い残しを抱えて毎日を行かなければならない。
線香の煙が波型を描いて見えない世界に消えてゆく。オカンの遺影の前には今朝、オトンが中黒商店で買ってきた和菓子がきれいに並べられている。
自分の入れたお茶を飲みながら咳をしているオトン。着替えるものがなく、ずっと同じものを着ている。
パンの頭の撫でながら、なにか話しかけていた。
ボクは離れた所からオトンを眺めている。この数週間で、オトンと三十五年分の話をしたような気がする。
この人のことをもっと好きになったら、オトンが死んだ時、また、あんなに悲しい思いをするのかと思うと、それが嫌だなぁ。オトンをぼんやり眺めながら、そう思った。
「麗春院朗妙栄信女」
住職からオカンの法号が送られてきた。おばちゃんたちやオトンにもファクスで送る。
「こりゃ、美人の戒名(かいみょう)やねぇ。オカンは喜びよるやろう。あたしらしいばいち言いよるよ」
思い出してはいつも泣いていますと、手紙をくれていたおばちゃんたちも、この戒名を見て明るい気持ちになったようだった。
「ほう。なかなかええ戒名やないか。しかしまあ、欲のない、ええ坊さんのぉ。小倉当たりで言うたら、だいたい戒名ちゅうもんわやなぁ……」
戒名と値段の関係にはひとくさりあるオトンは、予測していた文字数よりも大幅に長くなっていることに納得していないようだったが、うれしそうに何度も新しいオカンの名前を口にしていた。
ばあちゃんから貰ったぬかに足して足して使いながら、毎日かきまぜ、今まで沢山のおいしい漬物を生み出し続けてきた、オカンの唯一の宝物のぬか床。
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