避難民への医療ケア、病院が新たな取り組み
　福島市の大原綜合病院が、福島第一原子力発電所の事故の影響で避難所で生活する人を、病院で診察できるようバスで送迎する新たな取り組みを始めた。
　福島市内にある福島県自治研修センターでは、避難指示が出された南相馬市や双葉町の住民が避難生活を送っている。常駐の医師は１人で、十分な治療が受けられているとは言えず、専門的な治療はできない。また、薬の備蓄もなく、ガソリンがないため、避難所から病院に行くことができなかった。
　７歳と３歳の子供を持つ南相馬市の片岡真喜子さんは、２人が鼻炎の症状を訴え、耳鼻科の医師の診察を受けるため、バスを利用した。今回は診療を受け、薬を処方してもらえたが、「上の子はお金もかかるので、お金もそんなに持って出てこれなかったので金銭面の方も心配がある。今後はなかなか厳しい」と話した。
　しかし、医師不足から、こうした取り組みができるのは一部の避難所に限られている。福島県内の病院の医師の中には、原発の不安などから県外へ避難する人もいるという。
　大原綜合病院の高取隆医師は「避難してきた方たちは、何らかの形で不安を抱える。そういう人たちに、何らかの形で開かれた病院であればいいなと」と話す。原発の影響から、依然として先の見えない福島県内の避難生活では、地元の医師の負担も増え続けている。