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【双语阅读】【恋空】第八十一回

时间:2011-08-08 08:34:27  来源:可可日语  作者:Anna

在日本的这部叫做【恋空】的手机小说,是一部感动1200万人的小说。

2006年10月7日,【恋空】正式出版,一个月内就卖出了一百万部,在当年度的文艺类书籍销量榜上位列第三。手机小说竟然挤入排行榜,与名作家的书分庭抗礼,这给日本出版界带来了重重一击。目前,【恋空】的销量已经打破140万,它成了社会的一大热点,被看作是改变小说界传统运作模式的传奇作品。

我们已经读了这么久,大家喜欢这部小说吗?

请伴随着优美的电影原声音乐,继续和美嘉一起,度过一段不可思议的青春时光吧。

第一页  日语原文

第二页 中文翻译作品

【日语原文】

 

ドタドタ… バタンッ

誰かが階段を上り、 激しくドアを開けた音で目を覚ました。

外はもう真っ暗。

泣きながら寝ちゃったんだ…。 あくびをしながら伸びをした時、
目の前に立ちはだかった黒くて大きな影。

口を開いて両手を伸ばしたたまま、 恐る恐る見上げた。

…優!? 優がなんでここにいるの?? 夢の続き…??

「行くで」 優は不機嫌そうな顔で美嘉を軽々と持ち上
げ、 そのまま階段を下りた。

状況が理解出来ずにイス?ミとシンタロウに助けを 求める

唇をパクパク動かす二人

【が.ん.ば.れ】 二人の唇は確かにこう動いていた。

強引に助手席に乗せられ車は動き出した。

「なんでここに…??」 美嘉の問いに無視する優 それどころか
目すら合わせてくれない

こんなに機嫌悪い優を見るの初めてかも…。

車は優の家に到着し、 再び持ち上げられて部屋へと連れ去られ た。

壁に寄り掛かり、 体育座りをしてみる。
相変わらず何も話そうとはしない優。 テレビをつけてないから時計の音しか聞こ
えない

電気さえもつけていないから優の表情も見 えない

「優…電気つけないの??」

遠慮がちにそう呟くと 優は立ち上がりこっちへと向かって来た。

その反動で机に置いてあったリモコンが床 へと落ち、

不快な音が部屋中に響く
優は目の前に腰をおろした。 暗闇にだんだんと目が馴れてきた。
表情まではわからないけど態勢はうっすら 見える

見える優の姿 怖すぎ…。

いつものやさしい 大人な優ではない。

暗闇がさらに迫力を増している。
「ゆ…優??」 恐怖でおびえながら小声で言うと、
優は美嘉の両手首を掴み強く壁に押し付け た。

「…痛っっ!!」 その力はとても強くて、優は男なのだと改
めて実感してしまう。

…なんて、 今そんなことを実感している場合ではない けど。

優は痛がる美嘉を見て、少し力を弱めた。

「…なんで俺に言わへんの?」

「えっ??」

「俺には相談出来へん?俺じゃ頼りないん か?」

優が何を言っているのかよくわからない。 でも、
きっと美嘉がイス?ミとシンタロウに相談したこと を、
すでに知っているように感じた。

「イス?ミちゃんとシンタロウから全部聞いたで」

やっぱり聞いたんだ。 家のこと…。

目は完全に暗闇に馴れ、表情も見えるよう になってきた。

鋭い目 怒りの顔。

普段優しい人が怒ると怖いってよく言うけ ど、
あながち嘘ではない。

優の顔を見ていたら何も言う勇気がなくな りそうだったので下を向いた。

「だって優の家離婚したから…思い出すか なぁと思って…」

手首を掴まれた手がゆっくりと離れ… 二人のおでこがくっつく

「アオか!同じ経験したことあるからこそ 話聞けるんやろ。」

「ごめん…」

「ったく…ほんまアオやな。だからほっとけ へんねん」

ため息をついて呆れた顔をしながらも きつくきつく抱きしめてくれた。

優の暖かい体温が 美嘉の不安や悲しみを少しづつ吸収してゆ く…。

さっきまでイス?ミの部屋で寝ていたはずなの に、
安心感からか再び睡魔が美嘉を襲う。

最近両親の喧嘩のせいで寝不足だったしな ぁ…

「こんなとこで寝たら風邪引くで」 優が抱っこしようとしてくれたが、
自ら立ち上がった。

「平気。自分で行く…」 手を繋いだままベッドへと向かった。 まだひんやりと冷たい布団に潜り込む。 それに続いて優も布団に入り、
右手を横に伸ばした。

美嘉はちょこちょこと優の右腕に移動し、 肩のあたりに頭を乗せた

優しく髪を撫でる優。

そのしぐさがとても心地良く、 嫌な出来事なんか全て忘れてしまいそう。

「優、ごめんね。」 優は髪を撫でる手を一度止め、
そしてまたすぐに撫で始めた。

「何がやねん」
なんで謝ってるのかなんて知ってるくせ に…
意地悪。

「優に相談しなかったことごめんなさい…」
「別にええよ。」 この口調
まだ少し怒ってるみたい

いや、 怒ってると言うよりスネている感じかな ぁ…。

「優おやすみのチュウは~??」 寝る前にはおやすみのキスをすることが、
二人にとって日課みたいなものだった。

「美嘉悪い子やったから今日はおあずけ な!」

そう言って頭を叩く優の表情に少し明るさ が戻ったような気がした。

しかしその表情もすぐに消えてしまい、 真面目な顔をしながらゆっくりと美嘉のほ うに体を向けてきた。

美嘉も腕枕をされたまま優のほうを向く。
向かい合わせになった二人。 優の吐息が美嘉の髪にやさしくかかり、
髪がふわっと揺れる。

美嘉の吐息が優の首もとにかかり、 えりがふわっと揺れる。

「美嘉はお母さんのどこが好きなん?」 突然の優の問いに、
少し戸惑いながらもお母さんの姿を思い出 しながら返事をした。

「あのね、料理が上手なところとすごい優 しいところと美嘉を支えてくれるところ…」

「ほなお父さんの好きなとこは?」

「怒ると怖いけど心配してくれるとこと か、どっかに連れて行ったりしてくれるし、 いつも美嘉を思ってくれるところ…」

「お姉ちゃんは?」

「喧嘩するけど相談のってくれて話聞いて くれて美嘉のこと1番わかってくれてると ころ…」

「美嘉は家族みんなが大好きやもんな。」

「うん…」

「なら、それを素直に伝えるとええよ。」

「…伝える?」

「俺も家族好きやったし離婚せんでほしか ったんやけど離婚せんでって言えへんかっ た。今もずっと後悔しとる。あの時俺が素 直になっとったら何か変わってたかもっ て」

美嘉は 今日お姉ちゃんとヒデオに言われたことを思 い出した。

「美嘉はお父さんもお母さんも大好きだか ら、大好きな二人が決めたことを受け止め なきゃいけないんだって…美嘉はもっと大 人にならなきゃいけないの…」
受け止めなければならない。 現実を…。
受け止めなきゃ。

空いてるほうの手で、 美嘉のほっぺをギュッとつねる優。

「家族を想う気持ちに大人も子供もない わ。思ったことを口にすればええねん!美 嘉には後悔してほしくないねん。」

自然に優の体に手を回していた。 胸にうずくまる。 頼ってもいいかな…??

「あのね、いきなりね、毎年行ってた家族 旅行がなくなったの…」

「うん」

「それでね、いきなりお父さんとお母さん が話さなくなってね…」

「うんうん」


「前はね、一つの大きなお皿におかず入れ てみんなで取り合ってたのに、今はみんな 一人一つのお皿に分けられてるの」

「うん」

「居間からね、笑い声が聞こえてこないの。 それでね…」
「うんうん」 優は張り詰めた糸がプツンと切れたように
泣きじゃくりながら話し続ける美嘉の肩を 抱き寄せ、
黙って聞いてくれていた

ただただ頷きながら…。

ようやく落ち付いた時、優は服のすそで鼻 水を拭いてくれた。

「楽になったか?」

「…うんっ!!」
「美嘉手出してみ?」 優の体に巻きつけた手を離し布団から出
す。
優は美嘉の親指と薬指と小指を折った。 出来たのは、
ピースサイン。

「ピース?チョキ??」 優は微笑み、
自分もピースをしてその指を美嘉のピース とくっつけた。

「俺がガキん時、親父に教わったおまじな い。 ピースには二つの意味があって、一つ目は
“辛い時とか勇気が出ない時にピースする と元気が出て笑顔になれる”」
「二つ目は??」 返事を急かす。

「二つ目は“誰かに向かって頑張れって応 援する時にピースをすればされた人は成功 する”らしいで!」
「ピースかぁ…そう言えば受験の時とかピ
ースしてくれてたよね!それって頑張れっ て意味だったの??」

「そうやで!だから受験成功したやん」

「しかも…美嘉今元気出て来たしっ!!」

「やろ?落ち込んだ時はピースやで。俺美 嘉が泣いてる顔も好きやけど、笑ってる顔 のほうがもっと好きやから!」

じゃれあっているうちにいつの間にか二人 共寝てしまった。

プルルルル

枕もとで鳴り響く うるさい携帯電話の着信音で目が覚めた。

着信:家

きっと昨日連絡もしないで外泊したから 心配して電話をしてきたのだろう。

電話はしばらく鳴り続けていたが出なかっ た。 もうちょっとゆっくり考えたいから…。

鳴り止んだと同時に携帯を手に取ると、 メールが二件ほど届いている。

しかも日付を見ると 届いたのは昨日だ。
メール BOX を開く。 受信:イス?ミ

《勝手に優さんに話してごめんね。でも、 優さんが1番美嘉のことわかってると思っ たの(:_;)勝手なことしてごめんね。私美嘉の 味方だからね!いつでも話聞くから》

受信:シンタロウ

《心配ばっかかけやがって。でももう慣れ た。むしろこれからも相談してこい!》

…ありがとう。

《話聞いてくれてありがとう(>_<)あと、 優に教えてくれてありがとね!超大好き
(^3-)家のこと、また報告するね。》

心でお礼を呟きながら二人同時に送信。

優は洗面所にいるみたい ちゃんとお礼を言わないと。

それと両親の離婚の意思はおそらく変わら ないだろうけど、
近々家族と話してみる。

もう逃げないよ。

「お、起きたか~。」

洗面所から戻って来た優はなぜか黒いスー ツを着てネクタイを締めている

授業かな。 でもまだ今は春休みのはずだし…。

「行くで!」

優は机から車の鍵を取り指でくるくる回し た。

「えっ、どこに??美嘉ノーメイクだし…寝 癖とかもひどいよ!?」

「えーからえーから」

強引に手を引かれたまま玄関へ行く。 美嘉は玄関の前で立ち止まってしまった。

「はよ行くで!」

「…靴がない!!」

そう…靴がない。 確か昨日イス?ミの家で寝ていて、
優が美嘉を抱えてそのまま車に…

「イス?ミちゃんちに靴置いたままやった」

「そーだぁ!!どうしよ~…」

?問題あらへん?

優は美嘉をパッと持ち上げる。 そのまま部屋を出て鍵を閉め、エレベータ
ーを降り強引に助手席に乗せられてしまっ た。

「出発するで!」

出発ったって… どこに行くんだよぉ~…

何も聞かされないで 寝起きでノーメイクのまま外に連れ出され 少し不機嫌だ。

さっき優が車の鍵を指で回してた行為。 あれは優が緊張した時に出る癖だというこ とをすっかり忘れて…。

着いたのは、 美嘉の家の前。

「えっ、美嘉の家行くの?!」

「そうやでぇ」

優は再び靴がなく裸足の美嘉を助手席から 持ち上げ、 玄関の前へと運びストンと降ろした。

「ちょっ…やばいよ!!昨日無断外泊した し…」

「俺を信じろ」

何かを決断したような表情。 何も言い返すことが出来ずにおそるおそる 玄関のドアを開いた。

「た…だいまぁ!!」 居間から聞こえてくるのはいつもと変わら
ない二人の怒鳴り声。

頭が痛くなる。

「入っていいよ…」

「おじゃましますは言わへんでええの?」

「喧嘩して帰って来たの気付いてないみた いだからいいよ!!」

靴箱の横に落ちていた小さなビニール袋を 拾い、優を部屋へと案内した。

「かわいくて女の子らしい部屋やな。美嘉 っぽいな!」

美嘉の部屋に優がいる。 なんか変な感じ…。

優が家に来てくれて嬉しいはずなのに… 笑顔を作っているけど本当はすごく悲しい んだ。

二人の喧嘩の声。 美嘉ね、
昨日無断外泊したんだよ??

怒らないの?? 帰って来たのに気付いてくれないの?? 家族なのに寂しいね。

本当に離れちゃうのかな

「何持ってるん?」

優は美嘉が手に持っているビニール袋を指 さす

「これ玄関の横に落ちてたの。ゴミだった ら捨てようと思って一応持って来たの っ!!」

ビニール袋の中身を確認しようと覗く。 その中身が確認出来た時美嘉は袋を床に落
とした

床に落ちた反動で袋にはいっていた中身は パラパラと音を立てて散らばった。
袋の中身は写真。 お父さんとお母さんが二人でうつっている
写真。

その写真がちょうど二人の真ん中で半分に 破られている。

お父さんが破いたのか お母さんが破いたのか そんなこと今はどうでもいい…。
ただその事実がショックだった。 優は何も言わずに床に散らばったバラバラ
の写真を集め、 机の上に置いてあったセロテープでパズル のように写真をくっつけ始めた

破かれた写真の中に、 美嘉がまだ生まれたばかりの頃だろうと思 われる写真がある。

まだ赤ちゃんの美嘉はお父さんに抱っこさ れていて お姉ちゃんはお母さんに抱っこされてい る。

その写真がみごとに半分に破られ…
【私はお母さんについて行くよ】 昨日お姉ちゃんが言った言葉が鮮明によみ
がえり美嘉はその場に腰を抜かした。
「くっつければ絶対戻るで、大丈夫」 優の言葉で我に返り、
一緒になって写真をセロテープでくっつけ た。
写真の上に涙を流しながら…一枚一枚繋げ 合わせる。

全ての写真をくっつけ終えて再び袋に入れ た時、優が突然立ち上がった。

「作戦開始やで」 優は美嘉を起こし、
写真の入った袋を持ったまま部屋を出て居 間へと向かって行く。

「え??今お父さんお母さん喧嘩中だから やばいって!!」

パニック状態の美嘉を見て優はニヤッと不 敵な笑みを浮かべた。
「大丈夫やで!信じろ」 優が言う“作戦”の意味がわからないまま
居間のドアを開けた。

二人の怒鳴り声が一瞬静まる。
「あの…彼氏連れて来たからっ!!? 半ばヤケになりながら
優を居間へと連れ込むと 優は美嘉の横に移動し、お父さんとお母さ んに向かって頭を下げた。

「美嘉さんとお付き合いさせていただいて る福原優と言います。K 大学の三年です。」

ポカーンとしているお父さんとお母さん。 そりゃあそうだ。

彼氏いること言ってなかったし…。

それにしても優は一体 何をする気だろう…。

「…K 大学は美嘉が受験した大学か」

ポツリと呟くお父さん。 優は本当に聞こえていないのか聞こえない
ふりをしているのかはわからないが、 お父さんの話題に触れずに話し続けた。

「美嘉は昨日俺の家に泊まっていました。 すみませんでした。」

突然何言い出すの!? しかも美嘉さん→美嘉に変わってるし!!

「美嘉昨日ずっと泣いてました。家族と離 れるのが嫌やって…大好きやからずっと一 緒がいいってそう言うてました。こんなに 家族想いな子、なかなかいないと思います」

優は… 優は自分の両親に言えなかったことを、 代わりに言ってくれたのかな。 美嘉にはそう聞こえるよ

「そうなの…?」 お母さんが美嘉に向かって問い掛ける。

美嘉は不安なような… 恥ずかしいような気持ちになり、 何も言えずに下を向いた

沈黙の中、 何かで背中を突かれ振り返る。
優が小さくピースをしてくれている。

昨日の夜、 優が教えてくれたピースの二つ目の意味。

【ピースを誰かにしたら頑張れって意味や ねん。ピースされた人は必ず成功するんや って】

美嘉は汗ばむ手を握りしめ 口を開いた。

「…美嘉はお父さんもお母さんもお姉ちゃ んも大好きなの。だから…離ればなれなんて 嫌だ!!また昔みたいに旅行に行きたい。大 きいお皿におかず入れて取り合いしたい の…家が変わっても住む場所が離れても… 離婚は嫌だよ…」

言い終わると同時に、 優に手を引かれ再び部屋へと連れ戻されて しまった。

「…え??なんで部屋に戻って来る の…??」

何?? 意味わからない。

しかも優の手には、 写真の入った袋がいつの間にかなくなって るし…
「そろそろええかな」 優は意味深な言葉を呟きながら再び手を引
き、 今度は居間のほうへと連れて行った。

ピース…

部屋に戻ったり居間に行ったり…

あまりに忙しい状況の変化に頭がついてい かない

額にしわを寄せながら居間のドアを開けよ うとすると、その手を止められてしまった。
「開けたらあかん!」 そして居間から聞こえる声に耳を澄ませる
優。 美嘉もマネをして耳を澄ませた。

お父さんとお母さんの会話が聞こえる。

「美嘉があんなふうに思ってくれてたなん て…」

ため息をつきながら言うお母さん。

「知らなかったな。」 落ち着いた声で答えるお父さん。

「あら、何かしら?」
ガサガサとビニール袋を開ける音がする。 あ…写真。
きっと写真見てるんだ。

「懐かしいな。結婚する前のやつか?」

「きっとそうね。お腹大きいからお姉ちゃ んがお腹にいる時かしら…」

「そういえばこんな時代もあったな。」

「そうね。」

アの隙間から姿を覗いて見た。


お父さんとお母さんは写真を見て微笑みな がら話している。

こんな姿見るの、 久しぶりだな…。

顔を上げると優はニッと笑い、 親指を立てて言った。

「作戦成功やな!」 作戦…。
優が言ってた“作戦”はこのことだったん だ。

覗いているのがバレないうちに、 二人は忍び足で部屋に戻った。

「もしかして、写真わざと置いて来た の!?」

興奮気味に体を乗り出す美嘉。 そんな美嘉を横目で見ながら、優は手をポ ケットに入れ口笛を吹きながら答えた。
「さぁ、どうやろな」

これで離婚がなくなったのかはわからな い。

でも、 いい方向に進んだのは確かだ。

優のおかげだよ…。

それからしばらく経っても、 居間から怒鳴り声が聞こえてくることはな かった

「そろそろ帰るな!」 玄関へと歩き出す優。

「ありがとぅ!!」

優が微笑みながら玄関のドアノブに手をか けた時居間のドアが開いた。

お父さんとお母さんだ。

「また遊びに来てね。」 お母さんが笑顔で言う。

「美嘉をよろしく」

お父さんは低い声で無表情のまま言った。

「ありがとうございますおじゃましまし た!」

優は頭を下げ、 家を出て行ってしまった

外ではエンジンがかかる音… そしてクラクションを二回鳴らす音…。

そのまま部屋には戻らずお父さんとお母さ んと共に居間へ行きソファーに腰をかけ た。

お父さんは美嘉の隣に腰をかけ、 お母さんは台所で夕飯を作っている。

「ただいまー。」 玄関から聞こえる声
お姉ちゃんがバイトから帰宅したみたい。

いつもはまっすぐ部屋に直行するのに… 今日はいつもと違う雰囲気に気付いたの か、 そのまま居間に来て食卓テーブルのイスに 腰をおろした。

「みんなが集まるの久しぶりだね。」 お姉ちゃんの声が居間に響く。

その言い方は少し寂しげで…。

「今日美嘉の彼氏が家に来たのよ。かっこ いい子だったね!」

お母さんは野菜を切りながらテレビに負け ない声で叫ぶ。

「本当?見たかった!美嘉また連れて来て ね!」

目を輝かせるお姉ちゃんをよそに、 美嘉はお父さんの存在を気にしていた。

父親だもん。 娘の彼氏の話聞いて いい気はしないよね。

昨日優の家に泊まったこともバレちゃった し…。

お父さんの様子をうかがう。 無表情…。

お父さんは新聞を真っ直ぐ見つめたまま口 を開いた。

「これから泊まる時はきちんと連絡しなさ い。優君にも迷惑かけないようにな。」

意外な言葉に居間は静まり、かかっている テレビ番組から聞こえる笑い声だけが響い ていた。

いつもは外泊に厳しいお父さんが… しかも一回しか聞いていないはずなのに
“優”って名前を覚えていた…。

嬉しくてにやけてまう。 美嘉はテレビを見ているフリをして笑っ た。

「この袋何?」 お姉ちゃんは写真が入っている袋を手に取
り、 中を覗く。

テープでくっつけられた写真を見て、 離れ離れになりかけていた家族が少しづつ もとに戻りかけていることに気付いたみた いだった。
「ご飯出来たよ!」 お母さんが食卓テーブルにおかずの入った
お皿を並べる。

美嘉は立ち上がり、 食卓テーブルに向かった

その時見たのは。。。 大きい一つのお皿に入ったたくさんのおか
ず。一人一つのお皿ではない

美嘉とお姉ちゃんは目を合わせた。

「あ~、この大きいから揚げ私が貰うから 美嘉取らないでね!」

「え~お姉ちゃんずるいっ!!じゃんけんし ようじゃんけん!!」

もうダメだと思っていた家族。 美嘉じゃどうにもできないと思っていた。

だけどほんのちょっとの勇気と。。。
ほんのちょっと素直になることで良かった んだ。

もしかしたらみんな仲直りするきっかけを 待っていたのかもしれないね。

お父さんもお母さんもお互い本当に嫌い合 っているのなら、 昔の写真を見てあんなに幸せそうに笑うこ となんてできないよ。。。。

の日、 何年振りかに四人で集まり一つの大きなお 皿からおかずを奪い合い、

そして居間ではとてもとても楽しそうな家 族の笑い声が
響いていた。。。。

家を出ることになった。 引越しの準備は着々と進んでいく。

小学校からずっと住んでいたこの家…。

荷造りをしながら涙が出そうになったこと もあった。

だけど… 大丈夫。


家が変わったとしても、家族が繋がってい れば離れることなんてないもん

寂しくなんかないよね…だから大丈夫なの。

お父さんとお母さんは時々言い合いをする こともまだある。 だけど、前のように家を出て行ったり泣い たりすることはなくなった。

居間から怒鳴り声が聞こえても

少し時間が経てばすぐにおさまり笑い声が 聞こえて来る。
あの日がきっかけなのかはわからない。 もしかしたら本当は二人とも意地を張り合
っていただけで
“離婚”なんてしたくなかったのかもしれ ないね

お母さんがお姉ちゃんを抱き… お父さんが美嘉を抱いたテープでくっつけ られたあの写真。

あの写真は今、 居間のテーブルの上に写真たてに入れられ て飾ってあるんだ。

お姉ちゃんもバイトや学校が忙しいながら も居間に顔出すようになり 家族が集まるようになった。

居間からは前のように笑い声が響いている んだ...。

美嘉は家を出ることをきっかけに、 一人暮らしを始めることにした。


引越し先が大学から遠く交通が不便なのが 理由でもあり、 少しでも家のお金の負担を減らそうと考え たのだ

今までお年玉などをひそかに貯めていた貯 金で自ら不動産に足を運び、
家を決めた。

大学近くにある 1LDK のデザイナーズマン ションの 4 階建ての 2 階。

デザイナーズマンション… 家賃は高く、
かなり無理をしたけど…

一人で不動産に行ってしまったために、
すすめられて断れなくなってしまったの だ。

大学に入ったらバイトしなきゃ家賃払って いけないよ…

 

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