【双语阅读】【白夜行】第十三回
寺崎が訪ねたという家の住所や連絡先を聞き、笹垣は彼を解放することにした。
捜査本部で報告すると、例によって中塚が笹垣の印象を尋ねてきた。
「五分五分です」笹垣は正直な気持ちを述べた。「アリバイはないし、動機はある。西本文代と組んだら、犯行はスムーズに行えたと思います。ただ一つ気になるのは、もし連中が犯人とすると、その後の行動が軽率すぎるということです。ほとぼりが冷めるまで、なるべく接触せんようにしようと考えるのがふつうです。ところがこれまでと同じように、寺崎は昼になると文代の働いている店にうどんを食いに行っている。これは解《げ》せません」
中塚は黙って部下の話を聞いていた。への字に閉じられた唇は、その意見の妥当性を認めている証拠でもあった。
寺崎について、徹底的な調査がなされた。彼は平野区のマンションで一人で暮らしている。結婚歴があるが、五年前に協議離婚していた。
取引先での評判は極めていい。動きが速く、無理をきいてくれる。おまけに商品価格が安い。小売店の経営者としてはありがたい存在のようだ。無論、だからといって殺人を犯さないとはいえない。むしろ、ぎりぎりの商売をしているので、いつも自転車操業のようだという情報のほうに捜査陣は注目した。
「文代にしつこく迫る桐原に殺意を抱いたというのもあると思いますけど、その時桐原が持っていた百万円という金に目がくらんだ可能性もあるんやないでしょうか」寺崎の商売の状況を調べた刑事は、捜査会議でこう発言した。これには多くの捜査員が同意した。
寺崎にアリバイのないことは、すでに確認済みだった。彼が名刺を置いたと主張している家に捜査員が行って調べたところ、そこの一家は当日親戚の家に出かけており、午後十一時近くまで留守にしていた。たしかに玄関ドアに寺崎の名刺は挟まれていたが、いつ彼が来たのかは判断できないわけである。また、その家の主婦は、十二日に寺崎が来ることになっていたのではないかという質問に対して、「そのあたりの日のいずれかにいらっしゃるとは聞いてましたけど、十二日と約束した覚えはないんです」と答えた。さらに彼女は、こう付け加えた。「十二日は都合が悪いと、電話で寺崎さんにいったようにも思うんですけど」
後の証言には重大な意味が含まれている。つまり、その家が留守であることを承知で、寺崎は犯行後にそこへ行って名刺を残し、アリバイ作りをしたとも考えられるわけだ。
寺崎に対する捜査陣の心証は、かぎりなく黒に近い灰色といってよかった。
だが物証は何ひとつなかった。現場から採取された毛髪の中に寺崎のものと一致するものはなく、指紋についても同様だった。有力な目撃証言もない。仮に西本文代と寺崎の共犯だとすれば、二人が何らかの連携を取ったはずだが、その形跡も見つけられなかった。ベテラン刑事の中には、とにかく逮捕して徹底的に取り調べれば白状するのではないかという意見を持っている者もいたが、とても逮捕状を請求できる状況ではなかった。
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