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东野圭吾作品精读:《白夜行》第四十二回

时间:2011-10-28 11:11:47  来源:可可日语  作者:Anna

ホテルの部屋の鍵を、ポケットに入れたままにしていたことに気づいたのは、友彦が自宅のそばまで帰ってきた時だった。しまったと一瞬唇を噛んだ。室内に鍵がなければ、ホテルの人間が変に思うに違いないからだ。

 だけど、どの道だめだろうな、と彼は絶望的な気分で頭を振った。

 花岡夕子が死んでしまったことを知った時、友彦はすぐに病院に電話することを考えた。しかしそれをすれば、自分が彼女と一緒だったことも告白しなければならない。それはできないと思った。それに今更医者を呼んだところで仕方がないだろうとも思った。彼女はもう死んでいるのだ。

 彼は手早く服を着ると、自分の荷物を持って部屋を飛び出した。さらに人に顔を見られないよう気をつけながら、ホテルを抜け出した。

 しかし地下鉄に乗っている間に、これでは何の解決にもならないことに気づいた。二人の関係を知っている人間がいるからだ。しかもそれは花岡夕子の夫という、最悪の人物だった。現場の状況から、夕子と一緒にいたのは園村友彦という高校生に違いないと彼は推理するだろう。そしてそのことを警察に話すに違いない。警察が詳しく調べれば、その推理が当たっていることを証明するのも難しくないだろう。

 もう終わりだと彼は思った。全部おしまいだ。このことが世間に知られたら、明るい将来などとても望めない。

 家に帰ると、居間で母と妹が夕食をとっている最中だった。彼は外で食べてきたといって、そのまま自分の部屋に直行した。

 机の前に座った時、桐原亮司のことを思い出した。

 花岡夕子とのことがばれるということは、必然的に、あのマンションでのことも警察に話すということになる。そうなると桐原もただでは済まないのではないかと思われた。彼のしていることは、性別を入れ替えれば、売春|斡旋《あっせん》と同じことなのだ。

 あいつには話しておかなければならない、と友彦は思った。

 部屋を抜け出し、廊下の途中に設置してある電話の受話器を取り上げた。居間のほうからテレビの音が漏れてくる。もうしばらく番組に熱中していてくれと彼は祈った。

 電話には、桐原本人がいきなり出た。友彦が名乗ると、さすがの彼も少し戸惑ったようだ。

「どうかしたのか」と桐原は尋ねてきた。身構えたような口調なのは、何かを察知したからかもしれない。

「やばいことになった」と友彦はいった。それだけで口がもつれそうになった。

「なんや」

「それが……電話ではちょっと説明しづらい。話も長くなりそうやし」

 桐原は黙った。彼なりに考えを巡らせているに違いなかった。やがて彼はいった。「まさか、年増女とのことやないやろな」

 ずばり的中されて、友彦は絶句した。桐原が吐息をつくのが、受話器から聞こえた。

「やっぱりそうか。あの時、ポニーテールにしてた女と違うか」

「そうや」

 桐原が再び吐息をついた。

「どうりであの女、最近|来《け》えへんはずや。そうか、おまえと個人契約を結んどったんか」

「契約やない」

「ふうん。そしたら何や」

 答えようがなかった。友彦は口元をこすった。

「まあええ。電話でこんなことをいうててもしょうがない。今、おまえはどこにおる?」

「家にいるけど」

「じゃあこれから行く。二十分で行くから待ってろ」桐原は一方的に電話を切った。

 友彦は部屋に戻り、何か自分にできることはないかどうか考えた。だが頭は混乱するばかりで、何一つ考えがまとまらなかった。時間だけがいたずらに過ぎた。

 そして電話を切ってから本当にジャスト二十分後に桐原は現れた。玄関に迎えに出た時、友彦は彼がバイクに乗れることを知った。そのことをいうと、「そんなことはどうでもええ」と一蹴《いっしゅう》された。

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