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东野圭吾作品精读:《白夜行》第四章 第三回

时间:2011-11-10 14:11:17  来源:可可日语  作者:Anna

《白夜行》将无望却坚守的凄凉爱情和执著而缜密的冷静推理完美结合,被众多“东饭”视作东野圭吾作品中的无冕之王,被称为东野笔下“最绝望的念想、最悲恸的守望”,出版之后引起巨大轰动,使东野圭吾成为天王级作家。2006年,小说被改编成同名电视连续剧,一举囊括第48届日剧学院奖四项大奖。“只希望能手牵手在太阳下散步”,这句象征《白夜行》故事内核的绝望念想,有如一个美丽的幌子,随着无数凌乱、压抑、悲凉的事件片段如纪录片一样一一还原,最后一丝温情也被完全抛弃,万千读者在一曲救赎罪恶的爱情之中悲切动容……   

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「その事故で雪穂さんは、完全に身寄りがなくなってしまったわけですね」

「そうなんです。お葬式には私も出ましたけれど、雪穂はお棺にすがりつくようにして、わあわあと声を出して泣いていました。それを見ていると、こちらもたまらなくなりましてねえ……」

 その時の情景が脳裏に浮かんだのか、礼子は目をしょぼしょぼさせた。

「それで、ええと、唐沢さんが彼女を引き取ることにされたわけですね」

「そうです」

「それはやっぱり、唐沢さんが一番親しくしておられたからですか」

「じつをいいますとね、雪穂を産んだおかあさんとは、さほど深い付き合いはなかったんです。家が比較的近いということはありましたけれど、それでも歩いて行き来できる距離ではなかったですしね。でも雪穂とは、文代さんが亡くなるずっと前から、しょっちゅう会っていたんですよ。あの子のほうから遊びに来てくれましてね」

「へえ……」

 母親が親しくしているわけでもない親戚の家へ、なぜ雪穂は一人で遊びに行ったのだろうと正晴は疑問に思った。その思いが顔に出たのだろう、礼子が次のように説明した。

「私が雪穂と初めて顔を合わせたのは、あの子の父親の七回忌の時です。その時に少し話をしましたところ、あの子は私が茶道をしていることに、ずいぶんと興味を持った様子でした。あんまり熱心にいろいろと尋ねてくるので、それなら一度遊びにいらっしゃいといってみたんです。あの子のおかあさんが亡くなるより、一、二年前だったと思います。そうしたら、その後すぐにやってきたので、ちょっとびっくりしました。私としては、ほんの軽い気持ちでいったことでしたからね。でも茶道をやってみたいという気持ちは本気のようでしたし、私も独り暮らしで寂しい思いをしていましたから、半分遊びの気分でお茶を教えてあげることにしたんです。そうしたらあの子はほぼ毎週、バスに乗って一人でやってきました。私がたてたお茶を飲みながら、学校での出来事なんかを話してくれるんです。そのうちに、あの子の来るのが、私にとっての一番の楽しみになりました。都合が悪くて来てくれなかった時なんかは、ひどく寂しい気持ちになったものです」

「じゃあ雪穂さんは、そんな頃からお茶を?」

「そうです。でもそのうちにお華なんかにも興味を示しましてね、私が生けているのを、横で面白そうに眺めたり、時には少し手を出したりもしてきました。着物の着方を教えてほしいといわれたこともありますよ」

「まるで花嫁教室ですね」正晴はそういって笑った。

「本当にそういう感じでしたね。まあ子供相手ですから、花嫁教室ごっことでもいいましょうか。あの子ったら、私の言葉遣いの真似までするんですよ。恥ずかしいからやめてって頼んだら、家でおかあさんがしゃべっているのを聞いていたら、自分まで汚い言葉を遣ってしまいそうになるから、私のところで直していくんですって」

 雪穂の、最近の女子高生には珍しい上品な物腰は、その頃からの蓄積らしいなと彼は納得した。もちろん、そんなふうになりたいという本人の願望があってこそだろうが。

「そういえば雪穂さんの話し方も、あまり関西弁っぽくないですよね」

「私は中道先生と同じで、ずっと以前、関東に住んでいたんです。それで殆ど関西弁を話せないんですけど、あの子はそこがいいとかいってくれます」

「僕もうまく話せないんですよ、関西弁」

「ええ。だから雪穂は、中道先生と話すのは楽だといっておりました。汚い大阪弁を遣う人と話していると、うつらないように気をつけるのが大変だと」

「ふうん、大阪生まれなのになあ」

「あの子はそのこと自体も嫌なんだそうですよ」

「本当ですか」

「ええ」初老の婦人は口をすぼめて頷いてから、少し首を傾げた。「ただねえ、ちょっと心配になることもあるんです。あの子はずっと私みたいな年寄りと一緒に生活していますから、最近の女の子らしい溌剌《はつらつ》としたところが少ないんじゃないかとかね。あまり無茶をしてくれると困りますけど、少しぐらいは羽目を外してもいいと思っているぐらいなんです。中道さんも、もし気が向くことがあれば、どこか遊びにでも連れて行ってやってください」

「えっ、僕がですか。いいんですか」

「ええ。中道さんでしたら安心ですから」

「そうですか。じゃあ、ちょっと今度誘ってみようかな」

「是非そうしてやってください。喜ぶと思います」

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