您现在的位置:首页 > 双语阅读 > 小说与诗集 > 白夜行 > 正文

【双语阅读】【白夜行】第七回

时间:2011-09-06 11:39:58  来源:可可日语  作者:Anna

桐原洋介は第二次大戦で出征している。その話かと思った。だが文代は首を振った。
「外国の戦争の話です。それでまた石油が値上がりするやろうというようなことを、桐原さんはおっしゃってました」
「ああ、中東戦争か」今月初めに始まった第四次中東戦争のことらしい。
「これでまた日本の経済はがたがたになる。それどころか石油製品が値上がりして、しまいには手に入らんようになるかもしれん。これからはどれだけ他人より金と力を持ってるかという世の中になる――そんなことを話してはりました」
「ほう」
 目を伏せながら語る文代の顔を見ながら、このあたりは本当のことを話しているのかもしれないなと笹垣は思った。問題は、なぜ桐原がそんなことをわざわざいったかだ。
 自分には金と力がある、だから自分に従ったほうが身のためだぞ、そういう暗示が含まれていたのではないかと彼は想像した。『きりはら』の記録によれば、西本文代が金を返して質草を出したことは一度もない。そういう貧窮した状態につけ込もうとしたことは大いに考えられる。
 笹垣は雪穂をちらりと見た。「その時、お嬢さんはどちらに?」
「ああ、この子は図書館に……そうやったね?」彼女は雪穂に確認した。
 うん、と雪穂は返事した。
「なるほど、その時にその本を借りてきたわけや。図書館にはよく行くのかな?」直接雪穂に尋ねた。
「週に一、二回」と彼女は答えた。
「学校の帰りに寄るわけ?」
「はい」
「行く日は決めてるの? たとえば月曜と金曜とか。火曜と金曜とか」
「別に決めてません」
「そしたらおかあさんとしては心配やないですか。お嬢さんの帰りが遅なっても、図書館に行ってるかどうかわからんから」
「はあ、でも、いつも六時過ぎには帰ってきますから」文代はいった。
「金曜日もその頃には帰った?」再び雪穂に訊く。
 少女は黙って、こくりと頷いた。
「桐原さんが帰られた後、奥さんはずっと家におられたわけですか」
「いえ、あの、買い物に出かけました。『まるかね屋』まで」
 スーパー『まるかね屋』は、ここから徒歩で数分のところにある。
「スーパーでは知っている人に会いましたか」
 文代は少し考えてから、「キノシタさんの奥さんに会いました」と答えた。「雪穂の同級生のおかあさんです」
「その方の連絡先はわかりますか」
「わかると思いますけど」
 文代は電話機のそばに置いてあった住所録を取り、テーブルの上で開いた。木下、と書かれたところを指し、「この人です」といった。
 古賀がそれを手帳に書き写すのを見ながら笹垣は質問を続けた。「買い物に出る時、もうお嬢さんは帰っておられましたか」
「いえ、この子はまだ帰ってませんでした」
「奥さんは買い物からお帰りになったのは何時頃ですか」
「七時半をちょっと過ぎてたんやないかと思います」
「その時にはお嬢さんは」
「ええ。もう帰ってました」
「その後は外出されてませんね」
「はい」文代は頷いた。
 笹垣は古賀のほうを見た。ほかに質問はないか、と目で尋ねた。ありません、と答える代わりに古賀は小さく頷いた。
「どうも長々とお邪魔しました。また何かお尋ねすることがあるかもしれませんけど、その時はよろしくお願いします」笹垣は腰を上げた。
 二人の刑事は部屋を出た。彼等を見送るために文代はドアの外まで出た。雪穂がそばにいなかったので、笹垣はもう一つ質問しておきたくなった。
「奥さん、これはちょっと失礼な質問かもしれませんけど、気を悪くせんと聞いてもらえますか」
「何ですか」忽《たちま》ち文代の顔に不安の色が出た。
「桐原さんから食事に誘われたとか、外で会ってくれといわれたとか、そういうことはなかったですか」
 笹垣の言葉に文代は目を見張った。それから強く首を振った。
「そんなこと、いっぺんもありません」
「そうですか。いや、桐原さんが、なんでおたくに対して親身になったのかと思うてね」
「だからそれは同情してくれはったんやと思います。あの、刑事さん、桐原さんが亡くなったことで、私が疑われているんでしょうか」
「いやいや、そんなことはないです。単なる確認です」
 笹垣は礼をいって、その場から立ち去った。道を曲がり、アパートが見えなくなってから、「臭うな」と古賀にいった。臭いますね、と若手刑事も同意した。
「金曜日に桐原が来たかと訊いた時、最初文代は来てないと答えそうな気配やった。ところが雪穂が横からプリンのことをいうたので、仕方なく本当のことをしゃべったという感じやった。雪穂にしても、ほんまは桐原が来たことを隠したかったんやないやろか。けど、俺がプリンの包装紙に気づいたから、嘘をつくのはかえってまずいと考えたんと違うかな」
「あの子やったら、その程度の機転はききそうですね」
「文代がうどん屋の仕事を終えて家に帰るのが、いつも大体五時頃。で、その頃に桐原が来た。一方雪穂はちょうどその頃図書館に行っていて、桐原が帰った後で帰宅する。何や、タイミングがよすぎるがな」
「文代は桐原の愛人ですかね。で、母親が男の相手をしている間、娘は外で時間を潰す」
「そうかもしれんな。ただ、愛人やったら、何某《なにがし》かの手当を受け取ってるやろ。玩具作りの内職までする必要はないという気がする」
「桐原がくどいてた最中やったのかもしれません」
「それは考えられる」
 二人の刑事は西布施警察署にある捜査本部へと急いだ。
「衝動的な殺しかもしれませんな」中塚への報告を終えた後、笹垣はいった。「桐原は銀行から下ろしてきたばっかりの百万円を文代に見せたんと違いますか」
「で、それが欲しいばっかりに殺した、か。しかし家で殺したら、現場のビルまで死体を運ぶのは無理やで」中塚がいう。
「せやから、何か理由をつけて、あのビルで待ち合わせをしたということですやろな。まさか二人で一緒に歩いて行ったとは思えませんから」
「死体の傷は女の力でも十分可能というのが鑑識の見解やったな」
「しかも相手が文代とあれば、桐原も油断してたでしょう」
「文代のアリバイを確認するのが先決やな」中塚は慎重な口振りでいった。
 この時点では笹垣の中では、文代の心証は極めて黒に近かった。おどおどした態度にも、不審なものを感じていた。桐原洋介の死亡推定時刻は先週金曜日の午後五時から八時の間と見られている。文代にはチャンスがあった。
 だが捜査の結果、全く予想外の情報が捜査陣たちにもたらされることになった。西本文代には、ほぼ完璧といえるアリバイが存在したのである。

上一页 [1] [2] 下一页

相关阅读

文章总排行

本月文章排行

无觅相关文章插件,快速提升流量