双语阅读:【青春小说连载】春の夢(8)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
一 (8)
知人の紹介で、母はキタ新地の「結城」という料理屋に住み込みで働くことが決まり、哲之は大東市に住む大学の後輩の口ききで、アパートのひと部屋を借りたのである。哲之は、奴等(やつなど)のことだから、大学の校門のところで終日待ち伏せをするかもしれないと考えて、五日(いつか)から始まった新学期の講義に一度も出席していなかった。ここまできたら、もう断じて払うものか。逃げて逃げまくってやる。哲之はそう心を決めていた。哲之はアパートの自分の部屋に帰り着くと、マッチをすった。ローソクに火をつけて、さっき柱に打ち込んだ釘に掛けてあるテニス帽を見つめた。哲之はテニス部の選手だったが、父が死ぬ少し前にテニスをやめた。もうそんな余裕などないことを知ったからだった。テニス部の仲間は、退部を申し出た哲之をひきとめてくれ、籍を残しておくから、テニスをやりたくなったらいつでも遠慮せずテニスコートに来いといってくれた。哲之はローソクの火が揺らめいている狭いアパートの一室に横たわり、いつまでも、陽子がプレゼントしてくれたフランス製のテニス帽を見ていた。部屋の中は、火の気がなく寒かったので、彼は早早に蒲団を敷くと、もぐり込んだ。隣の部屋から咳きが聞こえ、しばらくして電話のベルが鳴った。隣は電話があるのか。哲之はあしたケーキか酒かを持って隣室の住人に挨拶に行き、電話番号を教えてもらい、自分にかかってくる電話を取りついでくれるよう頼んでみようと思った。自分にかかってくる電話は、母と陽子からしかない筈で、それならば、せいぜい週に一、二回だろうから、相手も迷惑がらずに使わせてくれるかもしれないと考えたのだった。哲之はローソクの火を吹き消した。そして、あした陽子が来ると思った。久しぶりに、ふたりきりになれる。
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