双语阅读:【青春小说连载】春の夢(38)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
三(3)
管理人として雇われていた老人に、哲之はよく馬券を買ってくれと金を預けられたことがある。阪急電車の梅田駅から大学のあるS市に行く哲之に、ついでだからちょっと寄って買っておいてくれと、わずかな金を数字の書き込まれたメモ用紙と一緒にポケットにねじ込むのである。場外馬券売場は大阪駅の裏にあったが、哲之は一度も老人に頼まれた馬券を買わなかった。老人の予想は一度も当たったことはなく、そのわずかな金は、いつも哲之の屋台での飲み代に変わった。哲之は老人の買う馬券が入ったらどうしようとは一度も考えたことがない。少ない小遣いのほんの一部で、固い馬券にしか手を出さないその老人には、あたり馬券を手中にする勝負(しょうぶ)強さなど決してありはしないとおもっていたし、もし入っても老人の張り金なら、配当金は何とか払える程度の額に違いないと計算していたからだった。
「新しい管理人を雇うまで、俺がその仕事をせなあかん。朝、七時に起きて、シャッターをあけるんやぞォ」
中沢はレコードの音量を落とすと、自分も酒を飲み始めた。
「アルバイト、きついんか?」
「いや、これまでやったアルバイトの中では楽な方やな」
「そのわりには、疲労困憊いう顔をしてるがな」
中沢は、チャーハンを頬張っている井領哲之の横顔をうかがいながら言った。哲之は、蜥蜴のことを中沢に話してみようかと思ったがやめた。中沢は興味を示さないだろうという気がしたし、何よりも疲れていたからだった。中沢が興味を示すのは、モダンジャズに関する話題だけで、ときには三日も四日も、このビル八階の部屋に閉じこもって、レコードを聴いていることがあるくらいだった。ステレオの装置も、中沢雅自分の手で何か月もかかって組み立てたもので、アンプもレコードプレーヤーもスピーカーも、それぞれ別々のメーカーのものを使っている。アンプならどこそこのメーカーの何型、プレーヤーは……、という具合に、その部分部分で最もいい物を集めて組み立てたのである。
「何か聞きたいレコードはあるか?」
と中沢に訊かれて、
「レディ?ジェーンをかけてくれ」
哲之は別段聴きたくもなかったがそう答えた。
「レディ?ジェーンか、昔、はやった曲やなァ……俺ももう長いこと聴いてない」
中沢は八百枚以上あるというレコード盤の中から、すぐにレディ?ジェーンをみつけだし、プレーヤーのターンに乗せた。哲之がチャーハンを食べ終わり、コップに半分ほど残っていた酒を飲め始めると、何度も耳にしたことのあるサックスの低い静かな旋律が流れてきた。曲に聴き入りながら、哲之は部屋の隅に坐り込み、壁に持たれたまま、虚ろな目を宙に注いでいる中沢を見つめた。きっとジェーンという女は娼婦(しょうふ)だったのだろうと思った。仕事を終えたレディ?ジェーンが、再び服を着て男のいる部屋を出、一人通りのない夜道を帰って行くさまを心に描いた。あっちを向いていてくれと言って、布団のうえに横坐りしたまま、下着を着け始めた陽子を、哲之はそっと盗み見たのだが、そのときの、可憐でありながらどこか退廃的でもあった陽子の身のこなしが、レディ?ジェーンの姿と重なった。するとまた柱に釘づけにされている蜥蜴が心をよぎった。
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