双语阅读:【青春小说连载】春の夢(48)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
四(6)
背ばかり高く、肉付きの良くない中岡は、カッターシャツの首廻りが大きくて、シャツと首との間に指が二、三本も入るかと思えるくらいの隙間があった。手の長さに合わせてカッターシャツを買うと、首廻りが合わなくなるのだと同僚にこぼしているのを、哲之は以前耳にした事があった。哲之は黙っていた。中岡に答えなければならない義務はないと思ったのだった。細くて長い中岡の首には、そのために異様に大きく見える喉仏がぷくついていた。中岡は指で前髪の乱れを整えると、
「磯貝のやつ、また発作を起こしたんやろ?」
そう言って薄笑いを浮かべた。
「あいつ、中岡には内緒にしといてくれて言いよかったやろ?」
「発作て何のことですか?」
中岡はちらっと哲之を見て、いかにも無視するように背を向けてから、
「早よ、仕事に戻れ。一時間なんぼで雇われてるんやからな」
と言った。ホテル内に後継(こうけい)者問題に関する抗争があることを、誰の口からともなく耳にしていた哲之は、中岡のぞんざいさが、それとどこかでつながっているような気がした。
哲之がアパートに帰り着いたのは、十二時少し前だった。彼は部屋の明かりをつけて、
「キンちゃん」
と呼んだ。哲之が蜥蜴につけた名前であった。いつものように、スプーンに水を入れ、キンの鼻に差し出した。キンはすぐにスプーンの中の水を細い舌を使って飲んだ。水を与えてから、冷蔵庫の上に置いてある四角い木の箱の蓋を外し、おが屑の中にいるクリムシをピンセットでつまむと、キンの鼻面(はなづら)に持っている親指と人差し指の力をゆるめる。最初はそのタイミングが合わなくて、せっかくキンが舌を絡めたのに、畳の上にクリシムを落としてしまうことが多かった。だがキンが、哲之の手から、クリシムを食べようとするまで二週間もかかったのである。
「お互いに、上手になったなァ」
キンが五匹のクリシムを食べ終えると、ピンセットの先でそっと鼻面(はなづら)を叩いて、哲之は言った。
「もうじき夏になるぞォ。夏になったら、この部屋はサウナみたいになる。それけど窓を開けたまま留守にするわけにはいかんしなァ……
キンはしっぽを左右にくねらせて、何度も瞬きをした。ティッシュ?ペーパーで、柱に着いたキンの排泄物を拭い取り、哲之はやっと畳の上に仰向けに寝転んだ。彼はキンの背を貫いている釘を見つめ、
「そうなったら、キンちゃん、俺が帰ってくるまでに暑さで死んでしまうかもしれんなァ」
と言った。哲之はふと、自分はいつまでこの蜥蜴を飼い続けるつもりなのかと考え、死んだら死んだで仕方がないではないかとも思った。
「キンちゃん。夏になったら釘を抜いたるよ」
そう言ってみたが、すでに釘はキンの内臓に癒着して、体の一部になってしまっているだろう。釘を抜いたら、せっかく癒えた大きな傷を再びキンの体に与えることになる。哲之は、どうしたらいいだろうと思い悩んだ。
「きょうは、荷物運びばっかりけど、チップは千五百円あったんや。外人客は、日本ではチップはいらんと教え込まれてるから、あれだけ重たいトランクを運んでやっても、サンキューのひとことだけや。そのかわり、新婚さんが三組とも五百円くれよった」
自由を奪われた、物言わぬ青光りする小さな生き物に、哲之は話しつづけた。
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