双语阅读:【青春小说连载】春の夢(49)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
四(7)
「磯貝さんと較べたら、俺なんかしあわせな方や。俺、磯貝さんがそんな哀しいめに逢うて来た人やとは思えへんかった。いやなやつやと思てたんや」
そのときドアをノックする音が聞こえた。哲之ははっとして身を起こした。体のあちこちに力が入り、不安が胸を苦しくさせた。もう一度ノックの音が聞こえ、
「井領さん」
という男の声がした。それは、決して忘れることの出来ない、独特のしゃがれ声であった。立ち上がるとドアの前に立ち、はいと返事をした。
「小堀(こぼり)や。あけてくれまへんか」
小堀はドアが開くと、勝手に部屋に入ってきた。ひどい近眼で、薄茶の度の強いレンズの奥に一重の長細い目をしばたたかせていた。
「捜しましたでェ。急に投げ出しやがって、すぐにみつけたろと思たけど、さっぱり行方(ゆくえ)が判れん。それでもまあ、やっとここへ辿り着いたけどなァ……」
小堀はあぐらをかいて坐り、立ち尽くしている哲之に、
「坐れよ」
と言った。哲之が坐るまで、小堀は白地に赤いストライプの入ったブレザーを着たままだったが、哲之が坐るとそれを脱いだ。
「お袋さんは、どこにわんねん」
「料理屋で住み込みで働いてます」
「ほな、多少の金は出来たやろ。俺もいっぺんにまとめて返せとは言わんがな。3カ月待ったるわ。3カ月で三十五万円、揃えてくれ」
「三十二万三千円でしょう」
小堀は、舐めるように、縁なし眼鏡の奥から哲之を睨みつけてきた。
「手間をかけさしやがって、居場所をみつけるために、こっちもいらん金がかかったんや」
「そんな金、逆立ちしてもありません。それに、ぼくとは関係のない金です。ぼくは一銭も親父に財産を残してもろたわけでもないから、借金を払わんとあかんという義務はない筈です」
「そんな理屈、二度と言えんような体になるでェ」
「警察に、あんたを恐喝で訴えます」
その瞬間、すさまじい衝撃(しょうげき)が哲之の頭の中に無数の火の粉を生じさせた。小堀は立ち上がり、もう一度、哲之の顔面をなぐった。倒れている哲之の横腹を何回も蹴りつけてきた。
「あしたまた来るわ。今度はもうちょっと気の利いたセリフを用意しときや」
小堀はブレザーを肩にひっかけ、部屋から出て行った。畳の上に血が滴り落ちた。鼻血と上唇の裏の深い切り傷からものだった。哲之が立ち上がったが、まっすぐ歩けなかった。台所で顔を荒い、ティッシュ?パーパーを鼻の穴に詰めて、タオルで畳の上に血を拭き取り、その場に横たわった。鼻血(はなぢ)はすぐに止まったようだったが、口の中から血はいつまでも流れ出ていた。あいつを殺したらどうなるだろう。哲之は柱に釘づけにされているキンを見つめて、そう考えた。あした来たら、出刃(でば)包丁(ほうちょう)で突き刺してやる。哲之は悔しさと恐怖(きょうふ)で体が震えた。どれほど気を静めようとしても、震えはますます強くなっていった。
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