双语阅读:【青春小说连载】春の夢(67)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
五(10)
蒲団がひとり分しかなかったので、哲之は敷き蒲団を磯貝のために敷き、横に掛け蒲団を並べて、その上に寝そべった。そうやって天井を見やったまま、
「いつから、そんなふうに考えるようになったんですか」
と訊いた。磯貝は服を脱いで、ランニングシャツとパンツだけの姿になり、蒲団の上にあぐらをかいた。
「ホテルに就職して、二年くらいたった頃からかなァ……」
横縞模様のポロシャツを脱いだために、いつもいささかの乱れもない頭髪の分けめや襟足の部分が逆毛立ち、磯貝の表情からは、職業用に無理に作り出し、おかげでそれがあたかも内面から自然に浮き出ているかのように見える毅然としたものが消えて、不安を宿した心細そうな、哲之がときおり鏡に映った自分の顔から感じるのと同じ怯えに包まれた目つきをさらけ出していた。哲之はそんな磯貝を見上げて、今夜、自分の部屋に伴ったことを後悔(こうかい)した。哲之は笑いたかった。ホテルのボーイ連中の悪口を言い合ったり、フロント係の、客に向けるおつにすました表情をこき下ろしたりして、にぎやかに眠りにつきたかった。そうしなければ、きょうの陽子の、いつもとは違う寂しそうなうしろ姿や、何か隠し事があるみたいなあいまい微笑が浮かんで来て、じっとしていられなくなるのだった。
蛙の大群が、また一斉に鳴き始めた。
「そういう方程式からいくと、死んでもまた生まれてくるというわけですか?」
そんな話題からは離れたい筈なのに、哲之は他に言葉が思いつかなくて、そう言った。磯貝は、力なく頷き、
「うん。死んでは生まれ、死んでは生まれ、また死んでは生まれてるように思うんや。あの世なんかあらへん。この世に生まれるんや」
と言った。大きな欠伸をしてから、哲之は寝返りをうって磯貝に背を向けた。
「俺、そんなこと、どうでもええわ。そんな夢みたいなこと、本気で議論する気あれへん。もうねましょうよ」
哲之は磯貝に、電灯を消してくれるよう言って目を閉じた。明かりひとつない夜道を行って、陽子に電話をかけたかった。しかし一時半を過ぎていて、陽子の一家はみな眠りについている筈であった。哲之は、朝起きたらすぐに陽子に連絡をとり、どこかで待ち合わせをしようと思った。あぐらをかいたままじっとしている磯貝の気配が伝わってきた。磯貝は立ち上がって電灯を消そうともせず、といってそのまま横たわって寝てしまおうともしないまま、身じろぎひとつせず坐り込んでいた。哲之は目を開けてキンを見た。磯貝がキンを見つめているを感じ取ったからだった。哲之は磯貝の方に向きなおり、きつい口調で言った。
「俺が寝てる間に、キンに何かしたら、承知せえへんでェ」
キンに視線を投げたまま、磯貝は、
「何かて、何や」
と呟いた。
「そんなこと言わんでも判るでしょう?」
すると磯貝はやっと立ち上がり、電灯のスウィッチを切りながら、
「釘を抜いてほしいのは俺の方や」
と言った。
「それやったら、思い切って、手術をしたらどうです。弁膜症の手術は、心臓の手術の中では一番成功率が高いそうやて、島崎課長が言うてましたよ」
磯貝が低い声で何か言ったが、蛙の鳴き声にかき消された。
「えっ?何ですか?蛙の声がうるそうて聞こえへん」
すると磯貝は哲之の耳元に口を近づけて言った。
「俺が恐いのは手術とは違う」
「何か恐いんです?」
「電車や」
こんどは哲之が起き上がり蒲団の上にあぐらをかき、磯貝を見下ろした。
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