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双语阅读:【青春小说连载】春の夢(69)

时间:2011-12-19 14:51:32  来源:可可日语  作者:dodofly

  小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。

五(12)

  それから哲之は、もう何を言われても返事をしないと念を押して目を閉じた。それなのに磯貝は、
  「なんで、人間は死ぬんやろ」
  と話しかけてきた。哲之はうんざりして三たび起き上がり、磯貝と向かい合って坐った。
  「頼むから、そんな話、やめてくれよ。不如帰の浪子(なみこ)やあるまいし、人間はなぜ死ぬのでしょうなんて訊かれても俺には判らん」
  「不如帰……。お前も古いこと知ってるんやなァ」
  磯貝の忍び笑いが蒸し暑い部屋の中に響いた。哲之は笑わなかった。彼は怒りを込め、声を殺して、囁き声で怒鳴った。
  「人間が死ねへんかったら、この世はいったいどうなるんや。六百八十歳とか千三百六十歳とかの爺さんや婆さんが、うろうろしとったら、気持が悪うてもう何とかして死にたいと思うぞァ。それに、何をしても死ねへんとなかったら、人間には恐いもんがなくなって、ただもう欲望だけのお化けになってしまうがな。世の中、無茶苦茶になるぞ。とにかく死ねへんのやからなァ。悪いことして、手に入れたいものを力ずくで奪い合って……。それやったら、もう人間やないがな。畜生(ちくしょう)や」

\

  哲之はそんなことを喋ってる自分が馬鹿らしくなって、わざと大きく溜息をつき、もうこれ以上は絶対に話に応じないと磯貝に言い含めて、横になった。
  「俺、妹が可愛いてなァ……」
  磯貝は言った。哲之は知らぬふりをして目を瞑っていた。
  「お袋までが、親父とおんなじ死に方をしたとき、俺、妹やつ、気が狂うかも知れんと思た。あいつ、元気を取り戻したのは、やっと最近のことや」
磯貝は哲之の肩を揺すった
  「なァ、井領。俺の妹、美人やぞォ。あれだけきれいな女の子は、そうざらにおらんぞ」
  「兄貴の欲目や」
  言ってから、哲之はしまったと思った。また話に応じて返して、磯貝の相手をしなければならぬはめになったと思ったが、それきりいつまでたっても磯貝の口から次の言葉が出てこなかった。哲之はふと、死が確実に行手に待ち構えているからこそ、人間は、何がいったい幸福であるのかを知るのではなかろうかと考えた。死があるからこそ、人間は生きることが出来るような気がしてきたのだった。彼は母の匂いを思い出した。生前の、父にまつわる楽しい思い出が、波のように、心の淵に押し寄せてきた。陽子のふくよかな微笑と清潔な体が哲之を包んでいた。アパートに帰り着いて、キンに餌を与えたあと、パンツ一枚になってビールを飲むときの、心のほどけていくような感覚が甦った。それらはみな、いまの哲之にとっては幸福と呼べるものであった。死があるから、人間は幸福を感じるのだと、哲之は胸の内で呟いてみた。そんなふうに考えたのは始めてのことであった。それはあたかも何物とも知れぬ大いなるものの囁きであるかのように、彼の中でこだました。すると、いっそう幸福というものの正体が姿をあらわしてきた。だが哲之は、それを明瞭に見つめることは出来なかった。哲之の心にふいに湧きあがった想念は、おぼろな姿をちらつかせて、やがて消えて行った。

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