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双语阅读:【青春小说连载】春の夢(77)

时间:2011-12-23 14:54:29  来源:可可日语  作者:dodofly


  小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。

六(5)

  「住道いうたら、確か阪奈道路を真っすぐ行って、赤井の交差点を過ぎたあたりでしたなァ」
  「そうです。赤井の交差点を過ぎたら、ちょっと判りにくい道を曲がりますから」
  「あの辺は、やれ大雨や、やれ台風やいうたら、すぐに街中が水浸しになることでんなァ。とにかく下水処理が出来てないところでっさかい、台風のあとにお客さんを運んで、途中で働けんようになったことが二、三回おまんねや」
  運転手はしきりに話しかけて来た。哲之は生返事をしながら、陽子の言葉を胸の内で反芻した。哲之に抱かれたまま、「私、その人とも、逢いたい」。陽子はそうはっきりと言ったのである。しかも陽子は、哲之に抱かれているときは、あのいつもとまったく変わらない、愛情のしるしを示していた。いささかの躊躇も、いささかの嫌悪も、その表情や体のどの一点にもあらわさず、哲之の愛撫に、自分の愛撫を重ね合わせてきた。それなのに、もうひとり心轢かれる男がいて、その男とも逢いたい、しばらく好きなようにさせて欲しいという。もし陽子が、街やキャンパスでいくらでも見かける美しいだけの娘だったら、哲之はこんなにも茫然たる思いにひたりはしなかった筈だった。陽子はいまどき珍しいくらいの気品と清潔さと優しさを持った娘で、知り合って三年近く、それは少しも変わることはなかった。そしてある日突然、自ら身にまとっているのを脱いだのだ。それは、陽子がもうすべてを決めたからではなかったのか。哲之はそう考え、ついさっき、公園で陽子と話し込んでいたことも、ふたりで初めてラブホテルなどに入ったことも何かの幻覚(げんかく)ではないのか思ったほどであった。彼はラブホテルの一室の構造を思い出そうとしたが、どうしても頭に浮かんでこなかった。ベッド?カバーの色も、カーテンの色も、壁紙の柄も、思い出せなかった。ただ陽子のからだの熱の名残りが、哲之の体の一部を一枚の膜みたいにくるんでいた。大学には幾組(いくくみ)かのカップルがいた。だがその中にあって、哲之と陽子は、学友たちから特別の目で見られていた。他のカップルはともかく、あのふたりが別れるようなことがあったら、俺は男と女のつながりはもう永久に信用せんぞと、ラグビー部の誰が言ったという言葉を哲之は思い浮かべた。

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「あの信号の手前の道を右に曲がって下さい」
  と運転手に言った。
  「ひと山越えたら奈良でんなァ。いまでこそ、建て売りの家がずらっと並んでるけど、昔は、ここらは辺鄙ないなかでねェ。住道の次は野崎っちゅう駅でっせ。知ってはりまっか?」
  「ええ、名前だけは」
  「名前だけ。そらそやろなァ。名前ぐらいしか知りはれしまへんやろ」
  そう言ってから、運転手はこぶしをきかせて歌いだした。
  「野崎参りィはァ、屋形船でェ、まいィろゥ……。ちゅう歌がおましてなァ、昔は、大阪から、屋形船をくり出して、芸者衆を乗せて、弁当持ちで野崎の観音さんにお参りしたもんだす。いまはあんた。川にはヘドロが溜まってる。川沿いには工場が密集してる。屋形船でまいろうってなぐあいにはいきまへんなァ」
  哲之は、タクシー代を三十数個の百円玉で支払った。
  「なんやしらん、貯金箱の中をかっさろうて、タクシー代をつくったっちゅう感じでんなァ」
  「まあ、そんなことです」
  運転手が、どこかに優しさの漂う笑顔(えがお)を向けたので、哲之もつられて微笑を返した。彼はアパートの階段を足取り重くのぼって行った。部屋に入り、蛍光(けいこう)灯のスウィッチをひねって、思わずあっと声をあげた。キンがだらりとのけぞって、顎や腹を天井に向けていたのだった。

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