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双语阅读:【青春小说连载】春の夢(84)

时间:2011-12-28 14:56:20  来源:可可日语  作者:dodofly

「哲之、なんでこんなに痩せたの?」
「中沢にも、栄養不良の死神みたいな顔をしてるって言われた」
「顔が尖ってる……」
「心が尖ってるからや」
ノックの音が聞こえた。陽子は慌てて哲之の衣服を丸めると、扉をわずかに開いて、それを係の者に渡した。それからバスルームに入って行った。湯がバス?タブの中に溜(た)まって行く音がした。
「あっ、パンツを渡すの忘れた」
バスルームから出て来た陽子に哲之は言った。陽子はしばらく考え込んでいたが、固く絞って冷房の風の出口に吊り下げておけば、すぐに乾くだろうと答えた。
そう言って哲之の背を押してから、陽子はまた電話のダイアルを廻し、ルームサービスの係に、コーン?スープとミニッツ?ステーキ、それにサラダと珈琲を注文した。
バス?タブの中に身を浸し、陽子の言ったように長い間体を温めながら、哲之はふいに、迷っている陽子に俺が結論を出させてやろうと思った。俺は、もう生涯二度と手に入らないかけがえのないものを喪うことになるが、あるいはそれによって、もっとかけがえのないものをえるかもしれない。彼は湯につかったまま、
「キンちゃん」
と呼びかけた。キンはすぐに哲之の心の中にやって来た。
「いづれの行もおよびがたき身なれば、とても地獄は一定すみかぞかし、やそうやでェ。キンちゃん、この言葉の主に、キンちゃんの姿を見せたれ。生き抜いてる姿を見せたれ。地獄と浄土が別々のとこにあるんやないということを教えたれ。キンちゃんも俺も、どいつもこいつも、自分の身の中に地獄と浄土を持ってるんや。そのぎりぎりの紙一重の境界線を、あっちへ踏み外したり、こっちへ踏み外したりして生きてるんや。キンちゃんを一時間も見てたら、それがわかるやろ」
いや、物は取りようで、中沢はキンを見たら、ますます歎異抄の言々句句に心酔するかもしれないとも思った。なぜか知らぬが、哲之は人間の心が判るような気がした。彼は陽子の心が判って来た。腰にバスタオルを巻いてバスルームから出ると、哲之は浴衣に着換えて、陽子と向かい合った。そして、
「俺はもう決めた」
と言った。
「陽子とは、もうきょうかぎり逢えへん。俺はおりた。俺の方からおりた以上、陽子は迷うことはないやろ。もうふてくされてアルバイトを休んだりはせえへん。あしたから働く。ひとりで生きて行くならともかく、女は男次代や。亭主が金持やったら女房も金持や。亭主が泥棒やったら、女房も、いやでも泥棒や。どんな男と結婚するか、実際博打みたいなもんやけど、先を見通す尺度はある筈や。その尺度で冷静に、俺とその人を比較したら、結論なんてすぐに出るやないか。俺、俺の方からおりるよ」

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