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双语阅读:【青春小说连载】春の夢(86)

时间:2011-12-29 15:41:25  来源:可可日语  作者:dodofly

  小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。

七(7)

「そんなアホなことはやめよう」
そう答えて陽子のうしろ姿を見つめた瞬間、彼は狂おしいほどの嫉妬を感じた。そうやって、遠くのビルの一角の明かりを見やっている陽子のうしろ姿は、哲之にとってはたまらなく哀しい一個の塑像であった。
「哲之が、この男はインチキやって言うたら、私……」
「俺は、結婚なんかするな、こいつはみかけ倒しのつまらん男やて、言うに決まってるぞ。たとえそうでなくても、俺はそう言うぞ。そういわれたら、陽子はあっさりと俺のところに戻って来るのか?相手がどんな人間か見きわめるのは陽子の仕事や」
「私、まだ二十一歳よ。私には判れへんもん……」

陽子は執拗だった。哲之はかたくなに拒否しているのに、電話を取り、その男の事務所の番号を廻した。いまから逢いたい。石浜さんの逢いたがっている人と一緒に行く。陽子は小声でそういった意味の言葉を相手に伝えると電話を切り、
「いまお客さんがあって、打ち合わせが終わるのに一時間ぐらいかかるから、八時にこのホテルのティーラウンジに来るって……」
と言った。陽子の口から、哲之は初めて男の名前を聞いた。
「俺は帰る。もう決めたんや。俺はおりるって。こんな貧乏神みたいな顔をして、自分で事務所を構えてる建築デザイナーと並ぶのはいやや。みすみすその石浜いう男を引き立ててみせるようなもんやからなァ」
ドアをあけて出て行こうとしたとき、陽子がうしろからしがみついて来た。陽子は行かないでくれと言って泣きじゃくった。哲之は仕方なくあけたドアを閉め、部屋の真ん中に戻ると、陽子をさとした。
「陽子はもう自分の気持ちがちゃんと判ってる筈やないか。十のうち、その石浜という人に九の気持が行ってしもてる。俺には一の気持は、ちょっとした罪悪感と、俺に対する同情や。同情で結婚して、一生悪い籤を引く気か」
こんどは哲之の胸に顔を埋め、両腕を強く哲之の背中に巻きつけて、陽子は泣き声で言った。
「哲之を好きよ」
「ええ加減にしてくれ。そやけどその人も好きや。そんな言葉、もう聞きとうないよ」
そう言ったとき、哲之はこすり付けてくる陽子の乳首(ちくび)が固くなっているのを肌に感じて、驚いてあとずさりした。その瞬間、ある考えが浮かんだ。自分も嫌悪感を抱くような卑屈な思いつきだった。彼は陽子に裸になるように言った。陽子は哲之の言葉の意味を即座につかみかねている様子だったが、哲之がカーテンを閉め、さっさと服を脱いで真っ裸で陽子に迫って行くと、
「哲之のアホ!」
と叫んで、ベッドの上の枕を投げつけた。投げつけてから、胸に飛び込んできた。
陽子を抱いている間中、哲之の心の片隅にキンがいた。あたかも、柱にではなく、自分という人間の心に釘づけにされているような一匹の蜥蜴の存在が、哲之の情欲をかつてなかったほどのあらあらしい行動に駆りたてた。彼は自分の決心をひるがえした。おりる……。俺はおりるもんか。あきらめたりするもんか。いま俺に抱かれたばかりの陽子を、その石浜という男の前に坐らせてやる。この貧乏な、痩せた野良犬みたいな顔をした俺が、何年、何十年か先に、どう変貌していくか、誰にも判りはしない。俺にすら予測出来ないのだ。とても地獄は一定すみかぞかし、か。確かに半分の真理歯ついている。けれども、あとの半分のより大きな真理を知ってはいない。地獄はすなわち紙一重の谷間(たにま)の向こうに至福の無上の歓びを孕んでいるのだからな。哲之は身も心もキンになっていた。俺はおりるもんか。陽子を取り戻して見せてやる。哲之の心の中のキンは、眩い光を放って、彼を絶えずそこに空かしさを隠し持つ歓びの頂点へ誘った。

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