双语阅读:【青春小说连载】春の夢(85)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
七(6)
陽子は何か言おうとして口をつぐみ、虚ろな目を哲之の肩のあたりにいつまでも注いでいた。
ルームサービス係が陽子の注文したものをワゴンにのせて部屋に入って来るのとほとんど同時に、乾いた服やズボンがきれいにたたまれて届いた。
「珈琲は半分残しといてね。私も飲みたいから」
陽子が、むさぼるようにして肉やサラダを食べている哲之にぽつんと呟いた。ポットには二杯分の珈琲が入っていた。そのことを教えると、陽子は前歯で自分の下唇を噛んでから、
「哲之は、人を見る目があるのよね。あいつは真面目で温和しそうにしてるけど、ほんまは泥棒犬みたいな人間なんやって、前に赤木さんのことを言うたでしょう?」
「言うたな、他の連中のことも言うた」
「私、すぐに人のことをそんなふうにうがって見るのが、哲之の悪い癖やて思てだけど、あとになったら、哲之の言うたことが当たってくるのよね。赤木さんだけと違うわ。秋田さんや美恵や光子のことも、私には判らへん欠点を、ちゃんと言い当ててしまう……」
「親父が商売に失敗して、すってんてんになったとき、それまで俺のことを、坊ちゃん、坊ちゃんて呼んでたやつが、掌を返し、井領のアホ息子て言う用になりやがった。そんなふうに見事に豹変したやつと、こっちが貧乏(びんぼう)になっても、以前と少しも変わらん態度で接してくれた人もおる。その二種類の人間の顔には、それぞれ口では言えん共通点があるんや。こいつはこっちが悪うなったら豹変するやつか、それともそんなこととは関係なしにつき合うてくれるやつか、人と逢うたら、無意識のうちにまず最初にそれを読んでしまうようになってしもた。不思議なことに、それはぴったり当たるんやなァ。悲しい性や」
哲之は皿に盛られたものをすべてたいらげ、ナプキンで口元を拭いてから、そう言った。陽子は珈琲をカップについでくれ、哲之と一緒にゆっくりと自分も珈琲をすすってから立ち上がり、カーテンをあげた。雨があがり、まだうっすらと夕陽の名残りに染まっているビル街の一角を見やっていたが、やがて、
「彼、まだ仕事をしてるわ」
と言った。哲之は椅子から立ち上がって陽子の横に行った。陽子は梅田新道から真っすぐ西に伸びている道を指差した。
「あの信号の角に新聞社のビルがあるでしょう。その隣の大木田ビル三階の、一番手前の部屋が、彼の事務所よ」
人の姿を見えなかったが、陽子の言う事務所には明かりがついていた。
「いまから、電話をするから、彼に逢ってみて」
哲之は浴衣を脱ぎ、服に着換えた。
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