双语阅读:【青春小说连载】春の夢(117)
提要:后天是星期五,必须到场的课程有三个。但是其中有两个是阳子来代替的,如果哲之不露面,请另一位男学生来代替也是可行的。而且平时阳子也是这样来做的。他这样推想着,还在观察着偶尔应付且用不安的目光扫视着咖啡杯的百合子的脸。
九(4)
「寮には何時に帰ったらええの?」
戸哲之は百合子に訊いた。
「門限は十時やけど、誰も守る人いてへんわ」
「みんな?」
「うん。寮の管理人さん、門を閉めたら寝てしまうねんよ。植え込みをくぐって自由に出入り出来るし、玄関の合鍵、三カ所に内緒で隠してあるから」
「三カ所に?」
百合子は決して勤務場所では見せない、かすかななまめかしさを含んだ笑みを注いできた。
「みんな共犯者やねん」
「なるほどな。みんなで共謀(きょうぼう)して、合鍵を三つこしらえたわけか」
百合子と並んで地下街降り、人混みの中を歩くうちに、哲之は思いついた計略を行動に移したことを後悔し始めた。予想よりもはるかに厄介な成り行きを辿りそうな気がした。さっきの男がどんな宗教にかぶれているのか判らないが、なんと見事に、自分の本性を教えてくれたことかと思った。--君は心優しきエゴイストなりーー。まさにそのとおりだ。それ以上的確かな分析はない。しかも男の短い言葉は、その底に無数の罵倒を孕んでいたような気がした。小物め、偽善者め、見栄っ張りめ、臆病者め、ノミの金玉よりもまだ小さいものをぶらさげた小才子め、怒りや苦しみやそねみや失意の風のに、いともたやすく揺れ働く愚か者め。哲之は、陽子に対する復讐心が、自分の姑息な自尊心から生じていることを自覚していた。陽子を烈しく愛していた。百合子と並んで歩いていると、哲之はそれをいつもより数倍も強く感じた。だからこそ、陽子を少しの間苦しめてやりたかった。石浜とホテルのティーラウンジで対面した日、陽子が言った言葉は正当だということも承知していた。--私、まだ二十一よ。男の人にちやほやされたら、やっぱり嬉しいし、心が働くわ。それが悪いって言うの?――。それと同じ言葉をこんどは自分に投げつけられたら、陽子は相手の言い分けが正当ではあっても、いかに哀しく傷つくものであるかを知るだろう。心優しきエゴイストか……。哲之は胸の中で自嘲を込めて呟き、キンも俺のことをそう思っているだろうなと考えた。
哲之と百合子は一軒の喫茶店に入った。百合子は初めのうちはぎごちなかったが、取り留めのない会話を交わしているうちにうちとけてきて、こんどの休日に映画を観に行こうという哲之の誘いに小さく頷き返した。
「こんどの休みはいつ?」
「あさって」
あさっては金曜日で、どうしても出席しなければならない授業が三つあった。しかしそのうちの二つは陽子も受けていたから、哲之の姿が見あたらなければ、誰か他の男子学生に頼んで代返しておいてくれるだろう。いつも陽子はそうしてくれるのだから。彼はそう推測して、にわかに済まして見せたり、急におどおどした目をコーヒーカップに走らせたりしている百合子の顔を見つめた。近くであらためて眺めると、グリルの入口や従業員用の通路で盗み見るときよりも、百合子はずっと美しい顔立ちをしていた。目の色が茶色がかって、鼻筋も高く形良かった。いつかシルクロードの写真集で、西洋の血の混じりがわずかに漂っている中国人の少女を見たことがあったが、それと似た雰囲気を百合子は持っていた。話しているうちに、哲之は百合子が中学生のとき天涯孤独の身になったことを知った。母とは五歳のときに死に別れ、父も竜巻に襲われて死んだと百合子は説明した。
「竜巻?」
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