双语阅读:【青春小说连载】春の夢(118)
提要:百合子还说,在母亲去世3年后父亲又再婚了,但没有再生孩子。
“我,很讨厌继母,那个女人也好象不喜欢我。我来到大阪后,那人也回到了娘家。我一张明信片没有写,对方也没有发来什么。”
九(5)
「うん、竜巻。田圃の裏に、殺虫剤とか肥料をしまってある小屋があってん。台風が来そうやったから、お父ちゃん、小屋が倒れんように杭を打ちに出かけてん。そしたら竜巻がまっすぐ走って来て、小屋をばらばらにしたの。木の破片が首に刺さって……」
「台風はまだ来てなかったんやろ?」
「うん、そやのに急に竜巻が起こったの。私、家の窓から、その竜巻がお父ちゃんのいてる小屋めがけて進んで行くのんを、ずうっとみてたんよ」
「兄妹は?」
「いてへんの」
父は母をなくして三年後に再婚したが、子供は出来なかったのだと百合子は言った。
「私、義理のお母さんのこと嫌いやったし、その人も私のことを好きになられへんかったみたい。私が大阪へ出てからは、その人も実家に帰ってしもた。葉書一枚出したこともないし、向こうからもけえへんわ」
「島根県のお百姓さんのむすめには見えへんなァ」
「なんで?」
「白系ロシア人の血が混じっているみたいな顔やもん。色が白うて彫りが深うて、きれいやから」
別段お世辞ではなく、素直に哲之は言ったのだが、百合子の目が潤み、歓びを隠そうとする仕草が、かえってそれを如実にあらわす結果になった。哲之はそんな百合子に欲情を感じた。その気にさえなれば、数週間後には自分のものなるなと思った。彼は自分の欲情押し殺した。百合子は計略の道具なのだから、陽子以外の別の女の存在としての役割につかうだけだ。彼がそう考えていたとき、百合子が口を開いた。
「そんなこと言うたら、島根県の農家の娘がみんな怒るから……」
「なんで?」
「島根県の農家の娘には、美人がいてへんみたいな言い方やもん」
二日後の昼に、この喫茶店で待ち合わせる約束をして、哲之は百合子と、地下街の十字路のところで別れた。いつもより四十分早く住道に帰り着いた。いつもは京橋を十一時三分に発車する四条畷行きに乗り、住道駅の改札口を出ると、駅前の公衆電話で陽子の声を聞くのである。けれども哲之は、陽子の母が「定期便」と呼ぶ住道駅からの電話を、当分の間かけないことに決めた。あからさまに不審な行動をとって、陽子に疑念を与えるのが先決だったからである。あした大学へ行ったら、陽子が、きのうはなぜ電話をかけてこなかったのかと訊くだろう。そうしたら、不自然な表情や喋り方で、すぐにばれるような嘘をつくのだ。たとえば公衆電話が故障していたとか、あいにく小銭がなかったとか。陽子は、駅前の公衆電話が故障していたら、商店街の赤電話があるではないか。それ以外にも、踏切りの手前に一台、踏切りを渡ってすぐの小さな焼肉屋の前にも一台……。小銭がなかったのなら、駅の切符売り場で両替してもらえばいい。いつもそうしているではないか……。彼女はきっとそう思うだろう。思うだけでなく、口に出してなじるかもしれない。するとまた不自然な表情と喋り方で弁解をして見せよう。自分が陽子の言動から即座(そくざ)に他の男の出現を嗅ぎ取ったように、彼女もまた同じ不安を抱くだろう。そんなことを考えているうちに、哲之はもう防寒(ぼうかん)コートなしでは歩けないほどの寒風が吹くようになった暗いいなか道を曲がって、安普請(やすぶしん)の二階家が並ぶ路地に帰って来た。
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