双语阅读:【青春小说连载】春の夢(135)
提要:哲之睡到了5:30,到达京都河原街时快9:00了。在修学院离宫附近,沿着河的夜道上停着几辆车。下了出租车来到门前,两位同时注意到忘记了带念珠。
十(6)
哲之は五時半近くまで眠ったので、京都の河原町に着いたのは九時前だった。修学院離宮に近い、決して住宅街とは言えぬ竹林の前に、確かに通夜が営まれていることを示す家紋入りの提灯が置かれ、河沿いの夜道には数台の車が停車していた。タクシーを降り、門のところに来て、ふたりは同時に数珠を忘れたのに気づいた。あした、哲之は卒業試験にそなえて、ある男子学生から幾つかの授業のノートを貸してもらう約束があったし、陽子は陽子で、正月休みを利用して関西に遊びに来ている伯父夫婦を神戸の街に案内する予定になっていた。だから、あしたの葬儀には、ふたりとも参列できなかったから、大阪駅で香典袋を買って、ふたりの連名で一万円札の包んで持参したが、急いでいてうっかり数珠を買うのを忘れてしまったのだった。
「どうしよう。こんな場合、お数珠なくして入られへんわ」と陽子が囁いた。
「しょうがないよ。いまさら引っ返されへん。沢村さんの不幸を知って、慌ててそのまま直行(ちょっこう)したから、数珠を忘れたんやて言うたらええんや」
玄関の戸をあけると、ちょうど僧侶が帰るところだった。顔見知りの中年の女中は、僧侶を送ってからすぐ戻って来、遠路わざわざお越しいただきまして、と丁寧に頭を下げた。長い廊下を歩いているとき、女中は言った。
「ご親戚の方々は、みなさん遠いところに住まいで、まだ着いてらっしゃらへんのです。いまお越しの方々は、ご友人と熊井さま御夫婦だけです」
沢村千代乃の遺体が安置された広い和室には、友人といってもほんの五人が黙して坐っているだけで、大邸宅の主の通夜にしては過ぎるものだった。哲之と陽子が焼香をすませてしばらくすると、その五人の友人たちのひとりが、居合わせた唯一の縁者である熊井に、申し訳ないが、自分たちはみな年寄りで、夜を徹する体力がないから、このへんで一旦引き揚げさせてもらいたいと言った。熊井は参列の謝辞を述べ、深く頭を下げた。五人はそれぞれ、遺体の納めれれている棺(かん)に手を合わせ立ち上がった。その中の、ひとりの老婆が棺に手をかけた。その瞬間、熊井が穏やかな、しかしどこか威圧的な言い方で、
「誠に申し訳ありませんが、故人が息を引き取ります前に、自分の死顔は誰にも見せてくれるなと言い残したので」
と説明して、老婆を制した。五人の参列者が帰ってしまうと、部屋には熊井夫妻と哲之と陽子の四人だけになった。
「いつぞやは、とてもご迷惑をおかけしてしまいまして」
そう陽子が言った。熊井は無表情に答えた。
「ラング夫妻にも、やっぱり伯母の死をしらせておこうと思います。あの息子には、他人事ながら腹がたちました。両親を迎えに来ることは来たんですが、じつに素っ気ないもので、伯母に対する挨拶も、礼を言ってるのか、余計なことをしてくれたと文句を言ってるのか判らないみたいなところがありましてねェ。どうもまっとうな精神の人間ではないなという気がしましたよ」
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