双语阅读:【青春小说连载】春の夢(165)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
十一(16)
すると、ずっと無言だった別の老人が、
「人生が五十センチの長さのもんやとしたら、男と女のことなんて、たったの一センチくらいのもんやで。そやけど、その一センチがないと五十センチにはなりよれへん」
そう呟いてから大声で笑い、蜥蜴の海の中に沈んでしまった。哲之は立ち上がり、ミノルを捜した。ミノルはどこにも見あたらなかった。
「ぼく、その陽子いう女の人と子供をここに連れてきたるわ」
「テッチン、陽子の居場所、知ってるんか」
「知ってるでェ」
「どうや。どこにいとんねん」
この言葉を最後に、ふたりの老人も蜥蜴の波にさらわれ、それっきり浮かんでこなかった。哲之は蜥蜴たちをかきわけて「満月」を出た。彼は商店街を抜け、灰色の道を走った。公衆電話のボックスに駆け込み、陽子の家のダイアルを廻した。意志(いし)と指先とが合致しなかった。ダイアルの二を廻そうとすると六を廻してしまい、慌ててやり直した。何度やっても自分の思った番号を廻せなかった。知らぬ間に、公衆電話のボックスにも蜥蜴ガ入って来て、哲之の足を腹を胸を、うごめきながら埋めていった。彼は爪先立った。蜥蜴たちは、哲之の鼻の穴のところまでせりあがって、そこで停まった。公衆電話が鳴った。陽子からに違いなかった。けれども、哲之は少しでも身を働かすと、蜥蜴の群れの中に沈んでしまうので、陽子からの電話を取ることは出来なかった。彼はどこかにキンはいないものかと思った。彼は「キンちゃん、キンちゃん」と呼んだ。
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