双语阅读:【青春小说连载】春の夢(173)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
十一(23)
「お袋には内緒やぞ」
何も言わず、陽子は氷嚢を元に戻した。
「金の代わりに、陽子の時計を持って行きよった。あの、ロレックスを。ごめんな」
午後の検査で、脳波には以上はなかったが、右の肋骨(ろっこつ)の二本にひびが入っていることが判った。全治三週間という診断だった。夕刻、陽子の両親が訪れた。哲之はふたりの表情から、これを機に娘との関係を清算させようとしているのではないかと推測した。
「世の中、青写真どおりには行かんなァ」
と、陽子の父は娘を見つめて言った。哲之は、陽子の顔つきが、常よりもいっそうふくよかであるのに、また泣き出したので、自分の推測が誤っていたことに気づいた。彼は自分で氷嚢を持ち上げ、
「こんな顔で申し訳ないんですが」
と前置きし、いつかは言わなければならなかった言葉を口にしようとした。陽子の両親は、哲之の言い方がおかしかったらしく、微笑んで居ずまいをただした。哲之は、陽子と結婚したいこと、父の借金のひとつは、きのうの事件で片がついたこと、就職も決まって、大学もほぼ卒業出来る見込みであることを述べた。陽子の父は、すでに心を決めていた。
「ひとり娘とひとり息子なんで、その点で多少、私の希望も聞いてもらいたいんですよ」
「はあ……」
「スープの冷めん距離っちゅう言い方があるけど、つまりそういうところでくらしてもらいたいんです」
「そのつもりです。ありがとうございます」
「しかし、えげつない顔やねェ。哲之くんとは、長いこと顔をあわしてないから、病室に入って来たときは、うちの娘、何でこんな醜男に惚(ほ)れたんかと思うた」
「きのう夜までは、男前やったんですけど」
陽子の両親が帰って行き、ふたりきりになった。
「きょう、泊まってくれるのん?」
「お母さんが、付き添ってあげなさいって」
哲之と陽子は抱き合おうとした。ノックの音で、陽子は慌てて椅子に坐り、哲之は氷嚢を両手で支えた。
病室に入って来たのは、アパートの持ち主だった。厚化粧の、本業は美容師である小肥りの大家は、いちおう見舞いの言葉を礼儀的に述べたあと、あの蜥蜴は何かと詰め寄ってきた。
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