日本語文法『重子音化
日本語文法『重子音化』
失と敗をつなげると失敗とう語ができます。失は(しつ)で敗は(はい)ですから、普通なら失敗は(しつはい)と読みますが、実際は(しつはい)ではなくて失敗(しっぱい)と発音します。このように「っ」と促音にすることを言語学では一般にgemination「重子音化」と呼んでいます。重子音化とは他の形態素と一緒に用いられる場合は、特定の環境で最後の母音が削除されることです。
(1)
a. 失敗
b. 失点
c. 失調
d. 失笑
e. 実費
f. 実体
g. 実写
以上の語は全て失(しつ)が後ろの形態素と一緒に用いられているために、最後の母音が削除されて(しっ)と重子音化(促音化)されています。では次のような語ではどうでしょうか。
(2)
a. 失望
b. 実弾
c. 実務
d. 実在
(2) の場合は失望は(しっぼう)ではなく(しつぼう)と重子音化が生じていません。(2b)の実弾も(じっだん)ではなく(じつだん)と言います。いったい、どのようなときに重子音化がなされ、どのようなときに重子音化の規則がはたらかないのでしょうか。私たちの脳の中にはもしも後ろの形態素が無声音の阻害音で、かつ共鳴性の素性の倍は阻害音同化規則が働くと考えます。これらの規則は外来語が日本語に借用される場合、しばしば阻害音(閉鎖音と摩擦音)は重子音化します。これは母音を含む音節が1モーラ分だけ重くなることを意味しています。
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