第9章 商談の進め方
セールスの仕方、商談の進め方というのは千差万別で、一般化することは極めて困難ですが、ここでは基本となることを取り上げました。これは個々のビジネスマンの奥義に属することですから、実戦経験を積んで体得するしかありませんね。
1、 セールスのこつ
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(1) 家庭訪問販売
李 :ごめんください。
主婦 :どちら様ですか。
李 :お忙しいところを申し訳ございません。私、○○社の者で、この地域の販売を担当している△△と申します。
主婦 :どんなご用件でしょうか。
李 :実はそちら様ではお車の買い換えのご予定はないかと存じまして、・・・。
主婦 :主人に聞いてみませんと、私にはちょっと・・・。
李 :でしたら、パンフレットだけでもご覧いただけないでしょうか。
・・・(ドアを開ける)・・・
初めまして。私はこのような者です。・・・(名刺を渡す)・・・
こちらがそのパンフレットでございます。あのう、ほんの二、三分でけっこうなんですが、お時間いただけませんか。ただ今、お買い換えになられたお客様には、旧車の買い取りサービスもいたしておりまして、大変お得になっております。
(2) 会社訪問販売
担当者:お待たせしてどうも申し訳ありませんでした。営業二課の佐藤です。早速ですが、今日わざわざお越しくださったのは、どのようなご用件で?
李 :お忙しいところを突然お邪魔いたしまして、申し訳ありませんでした。私、○○社の者で、営業を担当している△△と申します。手短に申し上げますと、この度、弊社が開発いたしました新製品××××につきまして、商品のご案内にお伺いいたしました。こちらはそのパンフレットでございますが、・・・。
担当者:ちょっと拝見します。
李 :この度の新製品は、他者のカラーコピー機と異なりまして、印刷の速度は二倍に向上しておりまして、・・・(商品の説明)・・・
常套表現と解説
・ ○○社の者で、この地域の販売を担当している△△と申します。
○○社の者で、営業を担当している△△と申します。
・ ほんの二、三分でけっこうなんですが、お時間いただけませんか
手短に申し上げますと
外回りのセールスというのは、門前払いされることも多くあろうと思います。こちらから一方的に押し掛けているのですから、どうしたら商品の説明にまでこぎつけられるか、そこにはセールスマンの様々なノウハウが存在することでしょう。
ここでは、その基本である二点だけ取り上げます。第一は相手に不信感を抱かせないように、簡潔に自己紹介をすることで、その際、・のような言い方が多くなされています。次に、あらかじめ短時間で話が終わることをアピールしておくことが肝要で、話を聞いてもらうためのこつです。その際、使われるのが・のような言い方ですが、相手が興味を示すようなら、更に続けて商品の説明や売り込みをしてかまいません。
(3) 効果的な話の展開法
<ケース1>
李 :ところでご主人はどちらにお勤めですか。
主婦 :主人は○○銀行に勤めております。
李 :ああ、○○銀行さんですか。偶然ですねえ、○○銀行さんは当社の取引銀行なんですよ。
主婦 :え?そうだったんですか。
李 :これも何かのご縁ですねえ。
<ケース2>
李 :つかぬことをお伺いしますが、お宅には息子さんがいらっしゃいますか。
主人 :ええ、どうしておわかりですか。
李 :はい、玄関先に男性用のマウンテンバイクが置いてありましたので、・・・。
主人 :ええ、高校三年になる息子がおります。
李 :そうでしたか。実は私も今大学一年になる息子がおりますが、受験のことでさんざん心配させられましたよ。
主人 :ええ、うちの子はちっとも勉強しないので、手を焼いています。
李 :お互い父親というのは息子のことでは苦労させられますねえ。
常套表現と解説
・ ところでご主人はどちらにお勤めですか
つかぬことをお伺いしますが、・・・か
私事で恐縮ですが、実は私も・・・
・ これも何かのご縁ですねえ
お互い父親というのは息子のことでは苦労させられますねえ
さて、セールスの時、もし相手が興味を示したら、プライベートな話題も取り入れると効果的で、そこから商品の販売に結びつけていくテクニックがあります。参考までに相手の気を引くプライベートな話題の切り出し方を紹介しておきました。突然、個人的な話を切り出すと相手も驚きますから、まず、・のような前置きを置いて話し始め、相手を話題に引き込みます。そのとき、相手の気を引いたり、共感を表したりするのが・のような言い方です。そして、更に相手側のいろいろな情報が聞き出しながら、それをセールスに結びつけていきます。
2、 商談の進め方
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(1)商談の切り出し方
<用件先行型>
李 :では、用件を先に済ませてしまいましょう。
取引先:ええ、そうですね。
李 :早速ですが、当社がご提案した共同企画の件、ご検討いただけましたか。
取引先:ええ、上司とも相談いたしましたが、大変乗り気でありまして、ぜひご一緒にとのことでした。
李 :いやぁ、よかったです。私もほっといたしました。では、今後、双方から案を持ち寄って、具体的なプランの練り合わせをするということにいたしましょうか。
取引先:そうですね。
<結論先行型>
李 :早速ですが、結論から先に申し上げます。実は貴社のご提示された条件を検討させていただいたのですが、二、三の項目につきまして、再検討いただきたい箇所がございまして、・・・。
取引先:と、申しますと。
李 :まず、この項目の・・・・・・の箇所について何ですが、この条件では当社としては、とても採算がとれません。
取引先:では、率直なところをお聞かせいただけませんか。
<繰り返し型>
李 :既にご存じのこととは存じますが、この度当社が開発いたしました××××(商品名)につきまして、ぜひとも、その販売を貴社にお願いできないかと思いまして、・・・。
取引先:こちらこそ、○○社さんとは長いおつきあいでございますので、ぜひそうさせていただけたらと望んでおりました。
李 :ありがとうございます。実は、当社の基本的な考えを文書にしてまいりましたので、ご検討いただけないでしょうか。
取引先:拝見します。
常套表現と解説
・ 用件を先に済ませてしまいましょう
早速ですが、結論から先に申し上げます
既にご存じのこととは存じますが
・ 率直なところをお聞かせいただけませんか
ご検討いただけないでしょうか
双方から案を持ち寄って練り合わせをするということにいたしませんか
お互い忙しいビジネスマンですから、「用件の説明は簡潔に」が第一原則で、「先に用件を終わらせる」が第二原則です。お互いが顔見知りの間であれば社交辞令的な会話は不要で、ずばり、・のように言って本題に入った方がいいでしょう。そして、用件を伝えた後で、自社の希望を伝える時に使われるのが、・のような表現です。ビジネスの世界では回りくどい話はしないで、はっきり希望や条件を提示して商談を進める方がいいでしょう。「時は金なり」、つまり、時間は一分でも無駄にしないことです。
(2) 説明の仕方
<説明前の言葉>
李 :この契約書につきまして、もしご不明な点がございましたら、遠慮なくご質問ください。
取引先:まだ、ざっと見ただけですから、何とも言えませんが、二、三気にかかる箇所がございます。
李 :どの点でございましょうか。
取引先:例えば、この第二項のこの文案なんですが、・・・。
<図表や数字を使って説明>
取引先:ここがよくわからないのですが、・・・。
李 :はい、この点に関しましては、少しわかりづらいかと思いますので、数字でご説明いたします。・・・(その場で書く、または資料提示)・・・
取引先:なるほど。
李 :ご理解いただけましたでしょうか。
取引先:はい、よくわかりました。
常套表現と解説
・ ~につきまして不明な点がございましたら、遠慮なくご質問ください
~に関しましては少しわかりづらいかと思いますので、数字でご説明いたします。
・ 例えば~の点(・箇所)なんですが、もう少し詳しくご説明いただけませんか
二、三気にかかる点(・箇所)がございます。
問題点をかいつまんで申し上げますと、・・・
・ ご理解いただけましたでしょうか
・~・はこのような内容に関する説明をしたり、説明をしたりするときの常套表現になっていますから、会話例をそのまま覚えて使いましょう。なお、「問題点をかいつまんで申し上げますと」は要点を取り上げる言い方で、ズバリ問題の本質に入っていくときに使います。
(3) 商談の詰め
<通常の場合>
李 :では、このような案でいかがでしょうか。
取引先:ええ、これなら当社としても問題はございませんが、一応、上司と相談の上で正式のお返事をさし上げると言うことで、ご了解いただけませんか。
李 :はい、けっこうです。では、できるだけ早いご返答をお待ちしております。
<決断を迫る>
李 :期日も迫っておりますから、この最終案でお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。
取引先:もう、二、三日待っていただけないでしょうか。
李 :いやぁ、それではこちらも上司から叱られますので、できれば一両日中にご返答願いたいんですが、もし、まだ、十分にご理解いただいていない点がございましたら、ご説明いたしますが、・・・。
取引先:わかりました。明日中には必ずお返事いたします。
李 :ありがとうございます。
常套表現と解説
・ このような案でいかがでしょうか
この案でお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。
まだ、十分にご理解いただいていない点がございましたら、ご説明いたしますが
では、ここにサインを願えますか
・ できれば、○○日までにご返答願いたいんですが
できれば一両日中にご返答願いたいんですが、
商談は最初は双方の希望を出し合うことから始まりますが、その案ですんなり決まることはまずありません。そこから交渉が始まり、双方が折り合える点がしだいに煮詰まってきます。そして商談は詰めの段階に至り、最終的には契約書へのサインということになります。なお、「まだ、十分にご理解いただいていない点がございましたら、ご説明いたしますが」は結論を引き延ばそうとしている相手に最終決断を迫る言い方になります。その際は、・のように期限を切ってプレッシャーを掛けたりします。
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