双语阅读:【青春小说连载】春の夢(36)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
三(1)
地下鉄の改札口を出て、地上からの空気が烈しい勢いで吹き降りてくる誰もいない階段を、肩を落として緩慢にのぼって行くと、井領哲之は夜更けの御堂筋を南に向かって歩いた。外資系会社の巨大なビルの角を東に曲がってまっすぐ進んだ。ラーメン屋の屋台が一台、灯の消えたビル群れの一角に停まっていた。
中沢第二ビルの隣には、三階建ての古いコンクリート造りのビルがあり、建物と建物との間に人ひとりがやっと通れるくらいの隙間がある。この小便(しょうべん)臭い隙間を通って右に曲がると、中沢第二ビルの裏に廻ることが出来る。表玄関の大きなシャッターは九時に降ろされてしまうので、哲之が中沢雅見のもとに行くときは、あらかじめ電話をかけて、裏の小さなくぐり戸の鍵を外しておいてもらうのである。
哲之は金属製の小さな扉を閉めて鍵をかけると、エレベーターの前に行った。エレベーターの電源は切られていた。哲之は、いつもは非常用の階段をのぼって行くのだが、今夜はとても八階まで自分の足でのぼる気力はなかった。エレベーターの電源スウィッチは、中沢の部屋の隣の、管理人室にあるのだった。哲之は一階のフロアにある赤電話で、もう一度、中沢の部屋に電話をかけた。
「いま、下に来てるんや。エレベーターのスウィッチを入れてくれよ」
「階段を使えよ。運動のために」
「きょうは、そんな元気あらへん」
「酔うてるのか?」
と中沢は訊いた。
「ええから、エレベーターを働かしてくれ」
いらいらしてきて、哲之は電話口で怒鳴った。しばらくすると、エレベーターのランプの灯がついた。八階で降りると、パジャマ姿の中沢が立っていた。中沢は管理人室に行って、エレベーターのスウィッチを切ると眠そうな目をぼんやり哲之に向けて言った。
「機嫌、悪いんやなァ」
「何か食べるもんないか?」
「酒とビールしかない」
中沢の部屋の扉を開けた途端、モダンジャズの旋律(せんりつ)が、さっき地下鉄の階段をのぼっていたときに吹き降りていた風のように、哲之に襲い掛かった。ステレオのセット、何百枚ものレコード盤、古ぼけた振子(ふりこ)時計、レコードとステレオに関する何百冊もの雑誌、大きな地球儀、小型のテレビ、冷蔵庫、ベッド。それに枕元の歎異抄(たんにしょう)。見慣れた中沢の部屋のちらかり具合が、哲之をふいに寂しくさせた。彼は冷蔵庫を開けて、卵を二個とバターの入った容器をとりだし、中沢に手渡して、
「得意のチャーハンを作ってくれ。晩飯、食うてないんや」
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