双语阅读:【青春小说连载】春の夢(40)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
三(5)
電車はのろのろと走った。放出(はなてん)でかなりの乗客が降り、鴻池新田でほとんどがら空きの状態になった。窓から覗くと、遠くに新興住宅地らしい明かりが見えた。
駅について、商店街を抜け、同じ電車から降りた何人かの勤め人風の男たちが、それぞれ一本道からつづく細い路地に曲がっていってしまうと、暗い夜道(よみち)には哲之だけが残された。シャッターを降ろした酒屋の角を左に曲がり、アパートの並ぶ一角をすぐにまた左に折れると、銭湯の暖簾が見えた。哲之は念入りに体を洗い、少しのぼせるくらい長く湯につかって、新しい下着を着けると、やっとくつろいだ気持ちになって、大きな鏡に映っている自分の顔を見つめた。心もち頬が落ちて、目つきがきつくなっているような気がした。体重計に乗ってみると、二キロ減っていた。
春風になぶられながら、アパートまでの暗い道を帰って行くうちに、何か身構(かま)えるような気持ちになってきた。いくら何でも、もう蜥蜴は死んでいる筈であった。けれども、哲之は心のどこかで、蜥蜴がまだ生きているような予感を抱いたのである。
四日間留守にしていたアパートの狭い部屋の中は、春風よりも冷たかった。彼は明かりをつけると、柱を見た。釘の頭が見え、そこにかぶせてある茶色い小皿が光っていた。哲之は、そっと近づき、釘を通してある小皿の底の穴のわずかな隙間から中を覗いたが、真っ暗で何も見えなかった。彼は思い切って、勢いよく小皿を柱から外した。哲之は大きな溜息をつき、両方の掌で自分の頭をかかえ込んだ。蜥蜴は釘で打ち付けられたまま、ゆっくりと働いたのだった。見つめているうちに、哲之の額に汗が滲んできた。蜥蜴は赤く細長い舌を出したが、その舌は柱にへばりついたまま働かなかった。哲之は蜥蜴はどうやって水分をとるのだろうかと考えた。犬や猫のように、舌でぴちゃぴちゃとなめるのだろうか。彼は台所に行き、小さなスプーンに水を入れると、出来るだけ蜥蜴から体を離し、手をいっぱいに伸ばして、それを蜥蜴の舌のところに差し出した。蜥蜴はじっとしていた。ときおり瞬きをするだけで出した舌を引っ込めようともしなかった。哲之があきらめてスプーンを蜥蜴の顔から離そうとした瞬間、蜥蜴の舌は水を舐めた。犬や猫と同じように、舌を使ってスプーンの中の水を飲んだ。哲之は右腕がだるくなると、スプーンを左の腕に持ち替えて、蜥蜴が乾きを癒すまで水を与え続けた。やがて蜥蜴は赤い舌を口の中にしまって、そのまま働かなくなった。
哲之は蒲団を敷くと、そこに横たわり、じっと蜥蜴を見つめ続けた。もう小皿で覆うことも忘れて、蜥蜴と、その胴体を貰いている釘に目をやっていた。そのうち、眠ってしまった。夜中に一度目を醒ました哲之は、起き上がって電気を消すと、再び深い眠りに入っていった。
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