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　小说《春之梦》发表于上世纪80年代，描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死，大学生哲之就流浪、打工，偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着，一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗，终于走出阴暗的生活。

四(1)

  その日は忙しかった。外国人の団体客が百六十名も、同時に空港から観光バスでホテルに到着したのである。ホテルの正社員であるページボーイは、中年以上の夫婦連れで占められている外人客を各部屋に案内する仕事に回り、哲之たちは三人のアルバイト学生は、三台の大型の観光バスから荷物を降ろす作業に廻った。あらかじめ、部屋の割りあては準備していたものの、百六十名もの外人客と、他の泊まり客がフロントの前に立って案内を待っているのを見ると、とても十人のページ?ボーイでは裁ききれない様子で、ボーイ?キャプテンの磯貝晃一のいらだたしげな働きが、重いトランクを荷台に積み込んでいる哲之の目に映っていた。
  「よう、これだけ重たいトランクを、ひとりで二つも三つも運べることやなァ……」
  アルバイト学生のひとりが息を弾ませて哲之に言った。実際、ひとつひとつの大きなトランクは、いったい何が入っているのかと思うくらい重かった。
  「アメリカ人と俺らとでは、腕力が違うんやなァ」
  と哲之は答えた。
  片手ではとても持ち上げることは出来ないので、両手でひとつずつ運んでいると、磯貝がやって来てきつい口調で言った。
  「そんな悠長なことしとったら、らちがあけへんやないか。お客さまは部屋に入ったら、まず何よりもくつろぎたいんや。そのために、トランクの中の着換えを待ってはるんやぞォ。君らのやり方やったら、何時間かかるかわからんやないか」
すると、いつも正社員のページ?ボーイたちと何かにつけて言い争う癖のある田中というもうひとりのアルバイト学生が、
  「トランク以外の荷物も含めて、全部で三百個以上あるんですよ。それをたった三人でバスから降ろして、ひとつずつ名前を照合しながらロビーに集めてから、各部屋に運ぶんです。それは三十分でやってしまえっちゅうんですか。そんなこと出来る筈ないでしょう」
  と顔を紅潮させて言い返した。磯貝はむっとしたように田中を睨むと、
  「要領よくやったら、いまの倍のスピードで仕事が出来るんや。君らのやり方を見てたら、まるで遊んでみたいやないか」
  そう言ってかすかにつりあがった目を注ぎながら、二、三歩、田中に歩み寄った。田中はいったん荷台に乗せたトランクを両手で持ち上げ、声を荒げた。
  「それなら。これを片手で運んでみたい。俺かて要領ようふたつずつ運びたいわい。お前、やって見せてみい。片手で持ち上げてみせてくれよ」
  哲之は田中の肩を叩いてなだめようとしたが、すぐにかっとなる性格の田中は、哲之の手を振りほどくと磯貝の胸ぐらをつかんだ。
  「だった三人しかいてないアルバイトの連中にしんどい仕事をおしつけやがって。ひとりか二人、お前の子分をこっちに廻したらどうやねん」
  「フロントでも人手が足らんで右往左往してるんや。まずお客さまをさばくことが先決やからなァ」
  そして磯貝は、自分の胸ぐらをつかんでいる田中の手をほどこうとした。
  「それなら、ページ?ボート全員で客をさばいといてから、あとでまた全員で荷物を運んだらええやないか。その方がよっぽど要領がええのと違うか」
  「ホテルの玄関口で、従業員がもめてたら、お客さまに笑われる。手を放してくれ」
  と磯貝は声を震わせて言った。そして、やっと手を放した田中に磯貝は説明した。
  「飛行機が遅れたから、チャーターした観光バスも予定より一時間以上も遅れてホテルに着いたんや。そやからバスの運転手が、早いこと車庫に帰りたがって、荷物を降ろすのをせかしてるんや」
  「ほな、せめてキャプテンのお前だけでも手伝え。案内の手配はフロントの連中がやりよるわい。このトランク、二個持って、ロビーに運んでみい」
  田中はこれまでの積り積った不満をいちどきにぶちまけるように、磯貝に迫った。
  「しんどい仕事をアルバイトの連中に押しつけるのは、きょうだけやないぞォ。お前ら、まとめて前歯の二、三本折ったろか」
  田中は京都の私大の空手部員だった。彼は薄笑いを浮かべると、指の関節を鳴らした。磯貝は援けを求めるように哲之を見たが、すぐに田中に視線を注ぐと言った。
  「田中くん。辞めてもらうわ。とにかく君がアルバイトに来てから、もめごとが絶えへん。そんな人を雇うとくわけにはいかん」

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