双语阅读:【青春小说连载】春の夢(45)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
四(3)
哲之は、始めてこのホテルで働くようになった日に挨拶をしただけで、それ以来一度も言葉を交わしたことのない、どこか冷たい表情を持つ若いフロント主任の顔を思い浮かべた。ふと、磯貝の口から出た「また」と言う言葉が気になり、
「何か持病があるんですか?」
と尋ねてみた。磯貝は黙っていた。話題をそらすように、哲之に話しかけてきた。
「井領くんの家は、何か商売でもしてるのお?」
「親父は商売をしてましたけど、社会がつぶれたのとほとんど同時くらいに死にました。 そやから、お袋はいまキタの新地の料理屋で働いてます」
磯貝が元気を取り戻した様子だったので、哲之は仕事場に戻ろうとベッドの端から腰を浮かしかけた。すると磯貝は、
「中岡には絶対に内緒にしといてくれよな」
ともう一度念を押した。哲之は浮かしかけた腰をベッドの端に再び降ろし、
「なんで中岡さんに知られたらあかんのですか?」
と訊いた。
「あいつは俺とは歳も一緒で同期入社なんや。そやけどあいつは大学出で、俺は高校しか出てない。はじめは、あいつも俺もページ?ボーイの仕事につかされたんやけど、すぐに差がついてしもた。あいつは英語は喋れるからフロントに入って、あっという間に主任になってしまいよったそやのに、あいつ、妙に俺にライバル意識を持ってるんや。優越感やと思てるんやろ」
「なんで、そう思うんですか?」
「俺のちょっとしたミスを、ことさら問題にしよる。もっともっと差をつけたろと思てるんやろ」
奥のベッドでいびきをかいていたのは、コック見習いの新入社員だった。突然慌てた様子で起き上がり、急ぎ足で仮寝室を出て行った。コックに夜勤はなかったから、おおかた、こっそりとさぼっているうちに眠り込んでしまったのだろうと哲之は思った。哲之は、言いたがらない事柄を、ことさらほじくり出そうとするのは良くないことだと思いながらも磯貝に言った。
「磯貝さん。心臓がわるいんでしょう?」
ベッドに横わたったまま、形のいい鼻梁に指を当てて、磯貝は目をあちこちに働かした。
「子供の頃から悪かったんや。医者は手術をせなあかんて言うてるわ」
哲之にホテルの内部を教えるため、磯貝は一階から二十四階まで案内してくれたことがあった。エレベーターがなかなかやってこず、いっそ非常の階段をのぼれば早いのにと不審に思ったのだが、なるほど磯貝はそのために階段をのぼりたくなかったのか。哲之は、磯貝くんに重たい荷物なんか運ばせたらあかんのやと言った島崎課長の言葉の意味をやっと理解した。
「俺のは、心臓弁膜症(べんまくしょう)やから、手術をしたら直るそうやけど……」
「それなら、思い切って手術したらええのに」
哲之がそう言うと、磯貝は笑顔を向けて、
「人のことや思て、簡単に言うなよ」
と呟いた。哲之は、磯貝の笑顔を始めてみたような気がした。
彼は仮寝室を出てロビーに降りると、事務所の島崎課長の所に行った。
「もうおさまったみたいです」
書類に目を落としていた島崎は角張った顔をあげて、
「そう、それよかった」
と言った。それから仕事に戻ろうとロビーに向かって歩き出した哲之を呼び停めた。
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