双语阅读:【青春小说连载】春の夢(51)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
四(9)
哲之は蒲団から起き上がり、豆電球のスウィッチを入れた。それからキンの傍らに行き、壁に体の片方を凭せ掛けて、キンの背に突き立っている釘を見つめた。目を閉じていたキンが瞬きをして、顔を働かし哲之を見た。そして、長細い舌をちらつかせた。
「喉が乾いたんか?」
哲之は声を忍ばせてキンに話しかけた。
「お前、柱に釘づけにされても死ねへんかったなァ……。なんで死ねへんかったやろ。キンちゃん、なんで生きてるんやろァ……」
彼は指先でキンの頭をそっと撫でた。キンの肌(はだ)はかさかさして湿りがなかった。哲之は台所に行き、コップに水を入れて戻って来ると、指を水に浸した。濡れた指から滴る水を、キンの顔や背に落としていった。
「キンちゃんは、なんで蜥蜴に生まれたんかなァ……。俺はなんで人間に生まれたんやろ。おい、これには何か理由がある筈やでェ。なァ、なんでやと思う?」
哲之は舌の先で、すでに血は止まってはいるが、ざっくりと割れている唇の裏の傷を舐めた。
「あんなやくざに、俺は絶対に金なんか払えへんぞォ。キンちゃん、こんなめに逢わされても死ねへんかったもんなァ。俺かて負けへんぞォ。鼻が曲がろうが、殺されようが、あんなやつの言いなりになってたまるかい。殺される前に殺したる」
言ってから、哲之はうっすらと笑みを浮かべ、
「そやけど、そんなことして、自分の一生を棒に振られへん。なんぼダニみたいなやくざでも、殺したら俺の一生は終わりや」
と自分の言葉を訂正した。彼は自分がいましがた見た夢をキンに語った。
「俺、こんな不思議な夢を見たのは初めてや。俺、ほんまに、何百年も、キンちゃんとおんなじ蜥蜴になって、死んでは生まれしとったんや」
そう言った瞬間、哲之は、もしかしたら本当に、あのまどろんでいた四十分の間に、自分は蜥蜴になって生き死にを繰り返していたのかっも知れないと考えた。だが、すぐにそんな自分の途轍もない考えを打ち消した。そんな筈はない、夢であったればこそ、いま自分は眠りから醒めて、こうやって人間としてキンに話しかけているではないか。哲之は壁にいつまでも体の片方を凭せ掛けたまま、青光りするキンの肌に目を注いでいた。そのうち、人間である自分と、蜥蜴になっていた自分と、いったいどっちが夢でどっちが現実なのか区別がつかなくなってきたのだった。どちらも夢のような気がした。そして、どちらも現実であるように思えた。
「陽子に、もうアパートに来るなって言うとかんとあかんなァ」
小堀(こぼり)がいつ訪れるか判らないのに、陽子をこのアパートの一室に近づけてはいけない。そう思った。
「陽子、なんで、こんな俺を好きになってくれたんやろ。そのうえ結婚しようっちゅうんやでェ。一生、安サラリーマンで終わるかも知れんのに……」
ガラス窓の向こうの暗闇が、ほんの少し青味がかってきた。哲之はキンの傍らから離れ、蒲団に倒れこんで体を丸めた。昼近くまで、彼は深く眠った。
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