双语阅读:【青春小说连载】春の夢(52)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
四(10)
十二時過ぎまで、蒲団の中で哲之はあれこれ考えにふけった。起き上がり鏡に自分の顔を映した。鼻も上唇も腫れあがり、とても人前に出られるような顔ではなかった。トーストを焼いてミルクを暖め、自分の食事を作った。傷口にしみるので 一枚トーストとコップ一杯のミルクを胃に流し込むのに、いつもの三倍ほど時間がかかった。哲之は顔を伏せ、地面に目を落として、駅前の交番までの長い道を歩いて行った。中を覗き込むと、中年の警官が机に坐って書類らしきものにボールペンを走らせて行った。哲之はいったん商店街に戻り、思い直してまた交番の前まで行った。
「あのう……」
哲之の声で警官は顔をあげた。
「御相談にのってもらいたいことがあるんですが」
警官はしばらく哲之の腫れあがった鼻と上唇を見ていたが、やがて、
「どういうことですか」
と言って椅子に坐るよう勤めた。哲之は、これまでのいきさつをかいつまんで警官に説明した。
「借金のことは別にして、これは確かな恐喝事件やし、傷害罪も適用されますよ」
警官は制帽を脱ぐと、かなり薄くなった頭髪を両の掌で撫で整えながら言った。
「取り立て屋っちゅうやつは脅かしはするけど滅多に手を出したりはせんのです。しかし、手を出してくれたおかげで、こっちはその小堀っちゅうチンピラをしょっぴくことが出来るわけですなァ……」
「ぼくは、そのあとのことが心配なんです」
「仕返しが恐いということですか?」
「ええ。仲間もいてるでしょうし」
「みんな、それで泣き寝入りしよる。借金の件は、民事訴訟として、法律で解決したらええ。しかし、あんたこうやって警察に相談に来た以上、それも脅かされて殴られたという事実がある以上、警察は腰をあげなあかんわけです。そのチンピラを訴えなさい」
どこかの中学校の校長みたいな感じの人だなと思いながら、哲之はその警官を見ていたが、
「訴えます」
とためらいつつ言った。その途端、自分の顔が青ざめていくのを感じた。警官はお茶をいれてくれたが、熱くて傷に沁みるので、二、三口すすっただけで哲之はぼんやりと、たちのぼる湯気を見ていた。
哲之は交番を出ると、すぐに公衆電話のボックスに入り、アルバイト先のホテルのダイアルを廻した。風邪を引いて熱があるので休ませてほしいと島崎課長に言って電話を切り、アパートへ帰って行った。
夜になり、八時が過ぎた頃から、哲之の心臓は烈しく打ち始めた。掌の汗を何度もズボンに擦り付けて拭いたが、それはあとからあとから滲み出て来た。鉄の階段を昇って来る足音が聞こえた。哲之は両方の拳を握りしめて部屋の真ん中に正坐した。ドアがノックされ、哲之が返事をする前に、小堀はすでに部屋に入ってきた。
「どうや、ええ返事を考えといてくれたか?」
だが哲之には、その小堀の言葉は耳に入らなかった。張り込んでいる筈が階段を昇って来る音を詰めて待っていた。
「なんや、お前。震えてるやないか」
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