双语阅读:【青春小说连载】春の夢(54)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
四(12)
大阪駅の中央口から地下道に降りた。駅の時計を見ると十一時半だった。五、六人の浮浪者が、それぞれダンボールで囲いを作り、その中に自分の寝場所を作って横たわっている。哲之は急ぎ足で地下道を右に曲がり、桜橋の方に向かった。キタ新地の本通りに入ってすぐに、母の勤める「結城」という小料理屋の暖簾が目に入った。「結城」は左右を大きな雑居ビルに挟まれた木造の二階家で、格子戸のところに藍染めの暖簾を吊っているだけの目立たない店であったが、このキタの新地では老舗の部類に属していて、常連の客筋が良いのと料金の高いので有名な店だった。ちゃんとした板前がいて、最初母は洗い場の係に雇われたのだが、ちょっとした付き出し物の味つけが本職よりも上手だという点を買われ、二週間ほど前から、突き出し専門の調理人として働くようになっていた。哲之は「結城」から少し離れたところにある花屋の前に立って、閉店の時間が来るのを待っていた。ホステスらしい女をつれた男が、洋蘭を山ほど買っていた。ショーウィンドウ越しに、哲之は男が金を払うのを見ていた。男の皮制の財布は一万円札でぶ厚くふくれていた。
最後の客らしい一団が出て行くと、「結城」の店内の明かりが消え、かすりの着物を着た若い女店員が暖簾をしまうために出て来た。哲之は女の後ろに歩み寄り、
「井領絹子の息子です。ちょっと母に逢いたいんですけど」
と言った。女は愛想よく中に入るように勤めた。それから店の中に顔だけ入れて、
「井領さん、息子さんが来てはるよ」
と大声で呼んだ。調理場には明かりがついていて、それが灯の消えた店内に拡がっていた。母は細い体を割烹着(かっぽうぎ)に包んで、濡れた手をタオルで抜きながら出て来た。そして遠慮して表に立っている哲之に言った。
「もうお客さんいてへんさかい、そんなとこに立っとらんと入っといで」
母は哲之が店内に入ると、調理場から顔を出した年配の板前に、
「息子ですねん」
と紹介した。
「石井さんや。キタ新地一番の板前さんで」
母の言葉で、その石井という板前はうっすら笑み(えみ)を浮かべて、ぶっきらぼうに言った。
「わしのこと、一番や言うてくれるの、おばりゃんでけやで」
「晩御飯たべたか?」
母はそう訊いてから、顔を曇らせて哲之の顔を見た。それから腕を引っ張って明るい調理場の中にともなった。
「どないしたんや、その顔……」
母は腫れあがっている哲之の鼻と唇に見入っていた。
「こけたんや。アパートの階段で」
哲之は一度も母を騙せたことがなかった。それで母が何か言おうとしたのをさえぎって、
「晩飯、食べてないねん」
と言った。
「昼にパンを一枚食べたきりや」
その哲之の声が聞こえたらしく、板前の石井が、
「イカの系造りに豚の角煮、それに赤出しが残ってるでェ」
そう言って、鍋をあけ、皿に盛るとカウンターの上に置いた。母が御飯をよそいながら石井に礼を述べた。
「おいしいで。ちゃんとお礼を言うとて、よばれなはれ」
哲之は石井にも、調理場に入って来たさっきの女店員にも、母が世話になっていることに対する礼を述べた。格子戸があいて、和服姿の濃い化粧をした女が足をふらつかせて入って来た。香水の匂いが漂った。
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