双语阅读:【青春小说连载】春の夢(53)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
四(11)
小堀がそう言ったとき、ドアが開いた。昼間の中年警官と、もうひとり若い警官が立っていた。小堀は口を半開きにして哲之と警官を交亙に見えた。中年の警官は部屋に上がると、小堀の肩を叩き、
「恐喝と傷害で逮捕する」
そう落ち着いた声で言って手錠を出した。
「逮捕状はありまんのか」
小堀は血の気の失せた顔をじっと哲之に注いだまま言った。
「見たかったら、見せたろうか?」
警官は小堀に手錠をかけ、
「何かあったら、いつでも相談に来てくださいねェ」
と哲之に笑顔で言った。
「どうせ、ほかにもぎょうさん余罪があるやろ。全部泥を吐かせたるさかいな。まあ、五、六年は娑婆には帰られへんでェ」
階段を降りて行きながら小堀に言っている警官の声が聞こえた。哲之はそっと台所の窓を開いて外を覗いた。いつやって来たのか、パトカーが一台停まっていた。哲之は慌てて窓を閉めた。壁に凭れて坐り込み、立てた膝の上に額を押し付け長い間じっとしていた。母はどうしているだろうと思った。電話では週に二、三回話はしているが、このアパートに移って来てからの二カ月間、哲之は一度も母と逢っていなかった。たまらなく母に逢いたかった。人混みの中で迷子(まいご)になった子供みたいな気持になり、彼は急いで靴を履くと部屋を出た。夜道を小走りで駅に向かっている途中、キンに水と餌(えさ)をやっていないことに気づき、慌ててアパートに走り戻った。クリムシを入れてある箱を覗くとオガ屑の中には四匹しかいなかった。その四匹のクリムシをキンに食べさせてから、哲之は四つん這いになって台所をさぐった。冷蔵庫の下からゴキブリの子供が二匹走り出てきたので、コップで封じ込め、ピンセットで捕まえると、それをキンの鼻先に持っていった。これまでは、クリシムとサシを交亙に与えるばかりで、ゴキブリなど食べさせたことがなかった。ピンセットに頭の部分を挟まれてもがいているで、ゴキブリの子供を、キンは小さな黒い目で見つめるだけで、いつまでも食べようとはしなかった。
「キンちゃん、ゴキブリや。こんなん嫌いか?」
その言葉に促されるように、キンの舌が素早くゴキブリに絡みついた。ゴキブリの足の一本がキンの口の端から出ていた。キンはゴキブリを飲み下すのに手間どっているようで、一本だけはみ出た足が消え、小さな塊が喉から腹へと移っていくのに随分時間がかかった。哲之はらいらしながら待っていた。それからスプーンで水をやった。
「よう飲んどけよ。もしかしたら、今日は帰ってけえへんかも判らんからな」
スプーンに残った水でキンの体をまんべんなく濡らしてから、哲之は部屋を出た。
閑散とした住道駅で三十分も片町行きの電車を待ち、ほとんど乗客のいない電車の座席に腰を降ろすと、今度は自分が夕食をとっていないことに気づいた。昼、ミルクとトーストを一枚食べたきりで、あとは何も口にしていなかった。どこかで警官が張り込んでいて、いつ小堀がやってくるかと、不安と緊張の中で時間を過ごしていたので空腹など感じなかったのだった。
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