双语阅读:【青春小说连载】春の夢(57)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
四(15)
「俺、勝手に泊まってかめへんのか?」
哲之は部屋の中を見廻して訊いた。
「かめへん、かめへん。おかみさんが店に来るのは七時過ぎや。板前の石井さんが朝の六時に、仕入れた物を運んで来て、すぐに帰りはる」
「ほな、お母ちゃん、朝の六時に起きんとあかんのか?」
「石井さん、鍵を持ってはるさかない、お母ちゃんは寝取ったらええんや。目が醒めたときは起きていって、お茶を入れてあげることも歩けどな。石井さんはそれからまた家に帰って寝はるんや。四時に起きて、自分で中央市場に行って、品物を自分の目で選んで来はんねや。石井さんが出勤しはるのは夕方の四時で、店は六時にあけるんやで」
母は押入れから蒲団を出して、ふたり分の寝床を敷いた。哲之は表通りに面した格子窓のところに腰を降ろし、
「きれいな部屋やなァ」
と言った。
「二年ほど前まで、お客さん用の部屋やったんやもん。ちゃんと床の間まであるやろ」
「なんでいまはつかわへんのや?」
「人手が足らんようになったさかい、もう下だけで商売するんやて言うではったけど、ほんまはだいぶお客が減ったんやろなァ。座敷を使いたがるお客さんも滅多にないよってに、それでもう二階は使わんことにしたんやろ」
「お母ちゃん、お風呂はどないしてんねや?」
と哲之は訊いた、母は小さな鏡台の前に坐り、顔にクリームを塗りながら、
「バスで浄正橋まで行くんや。一軒だけ、古い銭湯があるねん」
「バスで銭湯に行くのん?」
「浄正まで、たったの五分やがな」
母が寝巻きに着換え蒲団に入ったので、哲之も服を脱いで部屋の明かりを消すと、下着姿のまま蒲団にもぐり込んだ。
「はよ一緒に暮らせるようにありたいなァ。お前と陽子さんと三人で……」
そう呟いてから、母は大きな欠伸をした。そしてすぐに寝息をたて始めた。やはり疲れているのだろうと思い、哲之も目を閉じた。新地の本通りに車の列がつづいている気配(けはい)は伝わってきた。人間たちの声がますます多くなり、笑い声や誰かを呼ぶ声が聞こえた。哲之は目を閉じて、それらのざわめきに聞き入ってきた。蜥蜴になって、何百年も生き死にを繰り返していたあの夢はいったい何だったのだろうと考えた。たった四十分の間に自分は何百年もの時間を経たのだ。たかが夢ではないかと思ったが、彼はある深遠な世界の淵に立って不思議な何物かを覗き込んだように感じていた。夢を見ていたときの自分と、目を醒ました自分と、どこがどう違うということのだろう。哲之は遠い駅の、そのもっと向こうの小さなアパートの暗がりの中で、いまも柱に釘付けになって生きているキンのことを思った。いつか釘を抜いて自由にしてやらなくてはならない。それもキンが死なないように、出来うる限り傷を与えないように、うまく釘を抜いてやりたい。キンの姿を脳裏に描きつつ、哲之はもう一度、昨夜のあの夢を見たいと思った。
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