双语阅读:【青春小说连载】春の夢(61)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
五(4)
「ずっとついとらんでもええでェ」
眠っているものとばかり思っていた磯貝が突然そう言ったので、哲之はぎょっとして顔をあげた。
「きょうは大変やったそうですねェ」
哲之が声をかけても、磯貝は目を閉じたままだった。
「何か重たい物でも運んだんですか?」
磯貝は静かにかぶりを振った。
「階段を走り昇ったとか……」
やっと目を開けて、磯貝は哲之を見た。
「そんなこと、する筈ないやろ」
人には他人に話したくないこともあるし、触れられたくないこともある。自分もそうだし、磯貝さんもそうだろう。哲之はそう前置きして、
「こないだ、島崎課長から聞きました。お父さんとお母さんとのこと」
と言った。磯貝はちらっと哲之に視線を投げ、
「あのおっさん、口が軽いからなァ」
そう呟いて、再び目を閉じた。
「ぼく、思い切って手術をした方がええと思うんですけど……」
「それと、俺の親父やお袋とのことと、何の関係があるんや」
長いことためらったのち、哲之は言った。
「こんな発作を繰り返してるうちに、ぼく、磯貝さんが死んでしまうような気がするんです。」
「こんな病気で、死んでたまるか。廻りの連中は騒ぎよるけど、俺はもう慣れてしもた。いつでも、しばらく静かにしてたら直るんや」
「電車に轢かれて死んでしまうような気がするんです」
哲之は自分の言葉に驚いた。自分の意志とは関係なく、思わず口をついて出た言葉だったが、それが磯貝に対してどれほど心無い言葉あったかに気づき、彼は目を伏せて足元の緑色の絨毯を見つめた。
「いまのは失言です。ぼくは……」
そう言いかけとき、磯貝は、
「俺もそんな気がしたんや」
と言った。哲之は顔をあげた。
「きょう、アパートを出るのがちょっと遅れたんや。ひと電車乗り遅れたら遅刻するなァと思て、駅まで行ったら踏切りの遮断機(しゃだんき)が降りよった。梅田行きの電車に乗るには、その踏切りを渡って改札口に行かんとあかんのや。電車が通り過ぎたとき、遮断機があがりかけたような気がしたから、急いで渡りかけたら、横におった人に『まだ反対から電車がきまっせェ』て怒鳴られた。慌てとって、うっかりしてたんやなァ。反対側からも電車が来てることに気づかなんだんや」
磯貝は、それまで働かさなっかった顔を哲之の方に向けて、何かを出すような目を宙に注いでいたが、やがて再び話しをつづけた。哲之は初めて、磯貝の感情というものが露になった顔を見たような気がした。
「電車を待ってる間から、心臓がドキドキしてきよった。俺もいつかきっと、親父とお袋のあとを追うはめになるんと違うやろかと思たら、もうたまらんぐらい恐ろしいなってきたんや。俺だけやあらへん。妹もそうなりそうな気がした。電車に乗ってるときに、ああ、もう阿寒と思た。梅田についてホテルに歩いて行くときに、もう目の前が白うないかけとった。しばらくロッカールーで休んでたんやけど、結局、ロビーにあがって来た途端、倒れてしもた……」
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