双语阅读:【青春小说连载】春の夢(76)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
六(4)
と訊いた。陽子は首を縦に振って立ち上がった。踏み切りを渡り、駅の南側に廻ってラブホテルの前まで行くと、哲之は決して歩調を緩めぬまま中に入った。案内係がひとことも口をきかずふたりを部屋に導(みちび)き、ドアを閉めて姿を消してしまうと、哲之は陽子をベッドの上に押し倒した。哲之が陽子の唇を噛むと、陽子もそれに応じ返した。アパートの哲之の部屋でふるまうのと同じ体の働きであり、反応であった。そして同じ歓びの声をいつもより少し押さえぎみに漏らして、哲之にしがみついた。哲之はそんな陽子の顔を、じっと上から覗き見ていた。陽子が閉じていた目をうっすらとあけたので、哲之はもう一度、その人ともう逢わないでくれと言った。陽子は自分の体を完全に哲之のものにさせたまま、
「私、その人とも逢いたい」
と言った。哲之の心に、戦慄に似たものが走った。叫び声をあげそうになったが、かろうじて押しとどめ、陽子から体を離して、さっとと身支度を整えた。
「哲之、先に出てね。一緒に出て行くの、恥ずかしいから」
その陽子の言葉に何の返事も返さないまま、哲之は安普請(やすぶしん)のラブホテルの階段を降り、帳場で金を払い、つれの者はもう五分もしたから出て来ると言って表に出た。彼は走った。踏み切りの警報機が鳴っていた。切符を買い、向かい側のホームへの階段を駆け上り、発車寸前の電車に乗った。いつもは拒んで、最後のときは必ず避妊のための用具をつけさせるのに、きょうは、陽子は自分の体液を体の奥深く受け容(い)れた。今夜の陽子は平静ではなく、うっかり忘れていたのだろうか。それとも、わざとそうしたのだろうか。哲之は電車の座席に坐ってうなだれたまま考えつづけた。狐(きつね)につままれているような心持ちであった。
梅田駅に着いたのは十一時四十分で、もう住道を通る最終の電車には間に合わなかった。母のところに行こうか、それとも中沢のところで泊めてもらおうか迷ったが、足は自然に母のいるキタ新地に向かって働き出した。新地の本通りの手前で、彼はキンのことを思い出した。きょうはことのほか暑かったから、水も与えず、冷たい風に当ててやらなかったら、朝までに死んでしまうだろう。哲之はポケットの中の金を数えた。ブラホテルの料金が予想外に高かったので、ポケットには六百円だったと少ししかなかった。きのうの夜、磯貝が払ったタクシー代は確か三千二百円だったなと思った瞬間、そうだ、きょうはたくさんチップを貰ったのだ。あの数十枚の百円玉はボーイ服のズボンのポケットに入れたままだ。哲之はそれに気づいて、来た道をまた戻って行った。ホテルの裏の従業員用の出入口からロッカールームまでの高熱の漂う通路を走り、自分のロッカーの鍵を外して、ボーイ服のズボンから硬貨をつかみ出した。百円玉が三十三枚、それに五百円札が一枚入っていた。このホテルにページ?ボーイとして働くようになってから四カ月以上たつが、すべての客がチップをくれたのは初めて、またそれは减多にあることではない。そう考えると、哲之はあたかもキンが、自分の身を守るために、神通力を送って、客たちの心をあやつったのではないかろうという気さえしてきたのである。
哲之の乗ったタクシーは個人タクシーで、いかに運転手が己の商売道具を大切にしているかを感じさせるシート?カバーや足元のマットの清潔さに気づいて、彼は自分の汚れた安物の靴をそっとぬいだ。そして靴を裏返し、マットの端に置いた。
「そんな、靴なんかぬぎはらんでもよろしおまっせ」
運転手が笑って言った。まさか足元までバックミラーに映るわけはあるまいに、なぜこの運転手は、自分が靴をぬいだのに気づいたのだろうと哲之は思ったが、その理由は訊かず、
「あんまり汚れない靴やから、汚したら悪いと思て……」
と言った。
「マットなんか、あとで洗うたらすむことでんがな。金を払うて乗ってるお客さんや。そんな遠慮しとったら、世の中、生きていけまへんでぇ」
「……はあ」
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