双语阅读:【青春小说连载】春の夢(75)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
六(3)
哲之には判るようで判らない陽子の言葉であった。哲之は駅に向かって歩き出した。陽子がうしろからついて来た。
「その人、歳はいくつ?」
「二十八」
「どんな仕事をしてるの?」
「建築デザイナー。ことし、自分の事務所を持って独立したの」
哲之は振り返って立ち止まり、
「そら、俺と結婚するよりも、よっぽどええよなァ」
と本心から言った。
「私、そんなことで哲之とその人を比べたりしてへん」
「比べたりせんとこと思てるだけや。そやけど陽子は心のどこかで、やっぱり比べてるよ。そしたら、自然に俺よりその人の方に傾いて行く。俺が陽子でも、そうなると思うなァ」
小さな公園があったので、ふたりは中に入って行き、ブランコに並んで腰を降ろした。哲之は少しの間ためらったが、その人ともう逢わないで欲しいと陽子に頼んだ。就職も決まっていないし、大学を卒業しても何年間かは父の借金を払っていかなければならぬ。けれども、自分が頑張って頑張って、必ずこの男と結婚してよかったと思えるようにしてみせる。自分は陽子が好きだ。たぶん陽子自身すら知っていないくらい、自分は陽子が好きだ。その人とはもう逢わないで欲しい。哲之はこれ以上必死な喋り方は出来ないに違いないと思えるほどに一心に陽子に言った。
「私、いまは、そんな約束、でけへん」
ひとことひとこと区切りながら、陽子はブランコの鎖をつかんで弱弱しい答えた。その言葉は杭打機みたいに落ちて来て、哲之は懸命に引きずり出そうとしている冷静さを、心の土中に埋没させた。
「なんでや。ほんのこないだまで、陽子は俺だけを好きやった筈やろ?なんで、急にこんなことになるねん」
「私、嘘はつかれへん。もう逢えへん言うて、嘘をついて、その人に逢うのはいややもん。そやから正直に言うたのよ。しばらく私の好きなようにさせて欲しいの」
いやいやをするような仕草(しぐさ)で首を振りつつ、陽子は泣きながら言った。
「しばらくて、いつまでや」
「……判らへん」
駅に電車が停まるごとに、改札口を出て来る人の数が減っていった。酔っぱらいが、こら、なにをいちゃついとんねんと呂律の廻らない口で叫んでどこかへ消えて行った。
「俺を好きやろ?」
陽子は大きく頷いた。
「その人も好きなんか?」
こんどは小さく頷いて、陽子は、
「自分でも、自分の気持ちが判らへん」
と呟いた。哲之は線路の向こう側の、マンションや貸しビルの並ぶ地域で、場違いな電飾板を煌々と灯しているラブホテルの屋根を見つめた。
「その人は、どこ辺まで行ってるの?」
陽子は顔からをあげ、
「映画を観たり、食事をしただけよ」
と言って、哲之を見つめた。哲之には信じることは出来なかった。彼はブランコから立ち上がり、ラブホテルを指差して、
「いまから、俺とあそこへいけるか?」
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