双语阅读:【青春小说连载】春の夢(89)
小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。
七(10)
「やくざのヒモがついてる女でもいい、それでも陽子がokの返事をくれたら結婚してアメリカへ行くという度量のある方やと石浜さんを見込んで言ってるんです」
突然陽子が烈しくかぶりを振った。哲之と石浜はほとんど同時にそんな陽子を見つめた。陽子は相変わらずオレンジジュースを見たまま、聞こえないかの声で言った。
「私、やっぱり哲之を好きです」
石浜から失望とも安堵ともつかぬ溜息が洩られた。
「残念ですね。それじゃあ私は引き下がりましょう」
と彼は言った。そして立ち上がった。しかしもう哲之は石浜を見ていなかった。陽子の心の奥深くをさぐろうと、一心にその横顔に見入っていた。彼は決して、陽子を取り戻したとは思っていなかったのである。
「さあ、教えて。その人間に本質を見抜く神通力を持ってる哲之の目に、石浜さんがどう映ったか教えて。そのために、私は哲之を石浜さんに逢わせたのよ。どう?私は石浜さんと結婚してたらしあわせになれたと思う?」
「俺が、あんなことを言えへんかったら、なれたかも判らんな。少なくともあいつはやくざやない。それに頭が切れる。清潔や。若い女が魅かれる材料をいっぱい持ってるうえに、気障でもなければ崩れてもない。そやけど、逆境に弱い。スマートに生きよう、スマートに振るまおうとしすぎてるよ。そんなやつは逆境に弱い。ふところが狭い。十年、二十年先のことまで俺には判らんけど、人生順調なときばっかりとは限らんからな」
「そんなときに、自分の心のよるべになってくれる人やて、私のことを言うてくれたわ」
「哲之をやっぱり好きですって言わざるを得んようになって、陽子は俺のことを嫌いになったやろ」
「嫌いにはなれへんけど、恐らくなった……」
「そのうち嫌いになるよ」
哲之はそう言い残して、ティーラウンジから出た。そしてテーブルの上にクリムシの入った箱を忘れたことに気づき、また戻って行った。クリムシの箱に手を伸ばしてそれをつかもうとした哲之の腕を握りしめ、陽子はじっと哲之を見つめた。
「帰りの電車賃、あるの?」
「大阪から住道までは、定期券があるから大丈夫や」
「あしたの朝食代は?」
「それはない」
陽子はハンドバッグから財布を出し、何枚かの千円札をクリムシの箱の上に置いた。
「あしたから働くから、こんなにいらんよ」
一枚だけポケットにしまい、残りを返そうとすると、陽子は、彼女だけが持っている誰の心をもなごませる微笑みをとり戻し、
「もとの体重に戻ったら、返してね」
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